【ネタバレ感想】映画『ドクター・スリープ』小説の世界観に独自の結末:続編はつらいよ

まいど、Leecaです。
スティーブン・キング原作の小説『シャイニング』の続編となるのが、本作の基となった小説『ドクター・スリープ』。その意味深なタイトルに加え、本作がどのようなラストを迎えるのかも気になるところです。
先日筆者も映画館で鑑賞してきたので、その気になる点にも触れつつ、あらすじ&感想を綴っていきたいと思います。キューブリック監督が手がけた『シャイニング』も含めてネタバレがありますので、未鑑賞の方はどうかお気をつけを!
映画『ドクター・スリープ』
■ ざっくり、あらすじ ■
原題:『Doctor Sleep』
ジャンル:ファンタジー・スリラー
脚本・監督:マイク・フラナガン
製作国:アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース
公開:米国⇒2019年11月4日/日本⇒同年11月29日
上映時間:152分
オーバールック・ホテルでの悲劇から40年後。『シャイニング』の力を持っていた男の子ダニーも大人になり、今では身を隠すようひっそりと孤独に暮らしている。
過去の惨劇のトラウマに苦しみ続けるダニー(ユアン・マクレガー)は酒に溺れ、その姿は亡き父ジャックと重なる。そんな堕落した生活を送るダニーの周囲では、児童が行方不明になる事件が多発していた。
そこへ突如、特殊能力を持つアブラ(カイリー・カラン)という少女がダニーの前に出現。彼女がその力を駆使して知り得た殺人事件の全貌をダニーに打ち明ける。
気づけばアブラと事件を追うダニーであったが、この運命によってダニーは、再び彼の地へと導かれていくことになるのであった。
映画『ドクター・スリープ』
■ ネタバレ感想 ■
▶️カテゴリーはSFファンタジー?
以前とある映画を観に劇場に足を運んだ際、本作のトレイラーを初めて観た筆者は、隣にいた主人と顔を見合わせるなり互いに首を傾げた記憶があります。
シャイニングの続編?それにしては随分と雰囲気が違うでないの・・・と。
キング原作の小説を読んでいない筆者ですので、『シャイニング』と聞いて真っ先に頭に浮かぶは、大好きなキューブリック版です。そしてそれが完成され尽くした名作だけに、続編と聞いて「しょ、正気なのか?」というのが本音としてありました。
それゆえ、特に興味を持てずにいたのですが、巷での高評価に加え友人が「めちゃくちゃ面白かったよ!」と推すので、気になって結局観に行ってきましたよ(まるで恋の始まりのような展開)。
いざ行くとなったら、急にワクワク期待に胸が踊り始める始末。えぇ、ほんとう勝手でしょう?でも一応、変に期待するのは良くないと自分に言い聞かせ、フレッシュ&ニュートラルな気持ちで劇場の席に着いた次第です。
さて、序盤から幼いダニーが三輪車でオーバールック・ホテルを疾走する名物シーンが登場します。キューブリック版『シャイニング』の息吹が感じられる、とても再現度の高いこのシーンでは自ずと口角も上がりました。ダニーがカーペットの上を走る時は無音、カーペット以外の所を走るとゴロゴロ鳴る車輪音もまた、ノスタルジック。本作ではダニーを違う子役が演じているわけですが、彼もとても可愛らしかったです。
また原作小説において、ダニーにとってより重要な人物として描かれているハローラン(カール・ランブリー)が序盤から何度か登場するので、小説ファンの方にとっても心踊る演出が散りばめられている印象を受けました。ハローランが、ダン(成長したダニー:ユアン・マクレガー)を狙ってくる悪への対処法としてマインドトリックを授ける点も、小説から受け継がれているようですね。キューブリック版『シャイニング』におけるハローランは、救助に駆けつけると早々ジャックに斧で胸をえぐられ死亡した(と思われる)ので、原作ファンの方々にとっては特に、感慨も一入だったのではないでしょうか。
他には、小説上でも《トゥルー・ノット/真結族 》に惨殺される野球少年、ブラッドリー・トレヴァー(ジェイコブ・トレンブレイ)が登場します。彼もまた「シャイニング」の持ち主だと示唆されていましたが、そんな彼を痛めつけて命気(スチーム)を吸い取るトゥルー・ノットの姿は、筆者の目にはやや滑稽に映りました。
が、「オーケー、これは原作の世界観を継いだファンタジー映画ということだな」ということで納得して、最小限の動揺をもって鑑賞続行。
そうこうしていると、アブラ(カイリー・カラン)とトゥルー・ノットの長、ローズ・ザ・ハット(レベッカ・ファーガソン)の攻防が開始。というより、アブラが強すぎて一方的に攻めまくるの巻。ローズがアブラの仕掛けた罠にハマる瞬間の臨場感がすばらしく、個人的には本編で一番グッときたシーンです。賢く用意周到なアブラがとってもクールなんですよね。てかカランちゃん、演技うますぎません?
一方、ローズ・ザ・ハットは個人的に最後まで好きになれませんでした。予告の時点から、どうしてもチープな印象を拭えなかったキャラクターの一人で、ヒッピースタイルな衣装にしろ、そもそもの存在感にしろ、全体的にインパクトに欠けるなぁ、というのが本音です。ローズを演じたファーガソンは目の保養になるセクシー美女でしたが、それがまた一層、キューブリック版『シャイニング』の俳優陣の異質な濃厚さを際立てる結果に。
彼女の演技は素晴らしかったので、きっとキャラ設定そのものが好みじゃなかったのかもしれませんね。それを言ったら元も子もないですけどね。ガハハ。
あとはトゥルー・ノットのメンバーとの闘いが、銃撃戦という思ったより現実的なものだったのも、ちょっとばかし肩透かしを喰らいました。
血ではなく気を吸うヴァンパイア集団
「そんなん奥さん、さっきからこれはホラー映画じゃなくてSFファンタジー言うてるでしょう!」という感じで、わたくしはもう目をつぶらせて頂きます。キング原作を読まれた方々にとって、ローズをはじめとする《トゥルー・ノット》がイメージ通りだったのかは気になるところ。
▶️ドクター・スリープとは?
気になる『ドクター・スリープ』というタイトルの意味ですが、これも前半で解明されます。酒浸りで定職に就けなかったダンが、のちに“Best friend”となるビリー(クリフ・カーティス)の助けをかりてアル中克服に努め、やがて用務員としてホスピスでの職を手に入れます(ホスピス面接シーンは父ジャックのホテル面接シーンと重なる)。
シャイニングの力で死期が迫った患者がわかるダンは、いよいよという患者を看取って廻るわけですが、その姿はまさに患者に死を告げにいく使者さながら。『ドクター・スリープ』のスリープは眠りという意味の英単語ですが、「死=永眠」と表現されるように、タイトル中のスリープは死を意味しています。周囲は死(スリープ)を嗅ぎ取る能力を有するダンを、ドクターではないですが敬称の意味も込めて、ドクター・スリープと呼び慕ったんですね。
ここでダンのお供として登場する猫の可愛いこと♪原作を準えているのかは謎ですが、この猫の登場に思わず、キューブリックが「飼い猫の行動にも特殊能力(ESP)を垣間見ることができる」というような発言をしていたことを思い出しました。やっぱり動物って、いろいろ嗅ぎ取るんでしょうね。とにもかくにも、癒やされる演出にほっこり♡
▶️続編はつらいよ
名作の狭間で揺れるフラナガン
本作の脚本・監督を務めたマイク・フラナガンは、キングの原作小説ファンとキューブリック版『シャイニング』ファンの両者を、バランスよく満足させようと全力を尽くしたことは画面からも伝わってきました。
そしてキューブリック版『シャイニング』が大好きな筆者でも、最終的にエンターテイメントに富んだ楽しい作品として本作を捉えることができました。
でもそれは、キューブリック版『シャイニング』の続編としてではなく、「原作の世界観てこういう感じなんだろうな」と、全くの別物として切り離して観たことに起因するものです。ですので、ホラー映画の金字塔キューブリック版『シャイニング』で感じた狂気や、物語としての深み・厚みを本作からはあまり感じられず。
そもそもの話、原作はキングの『ドクター・スリープ』なので別物なのは当たり前なんですけど、予告でも大々的に見せていた名シーンの数々は、言わずもがなキューブリック版『シャイニング』のものですので、まぁ、それなりにファンは期待してしまいますよね(という話)。
実際、オーバールック・ホテルに再びダンが降り立つ終盤なんかは、キューブリック版『シャイニング』の怒涛の回想劇が待っておりました。
『シャイニング(1980)』より
双子の少女、頭から血を流すタキシード姿の紳士、エレベーターの血の洪水(ローズチラ見かい!)、迷路、タイプライター、そして “Here’s Johnny! ”の現場などなど・・・まさに何でもござれの“Great Party isn’t it?” 状態。
有名な血の洪水場面は撮影が困難なことから、キューブリック版の映像を使用したんですって
アブラの脚の長さがホラー
かつてジャックとウェンディの死闘が繰り広げられた階段で、ダンがローズに闘いを挑む構図。そして途中、ダンが片足を負傷し階段から転げ落ちるなど、ダンと亡き父ジャックの姿が重なるシーンも続々登場します。
「くぅ〜これこれ〜ぃ!」と興奮しノスタルジーに浸る反面、「どやさ!」と言わんばかりに詰め込まれた『シャイニング』おさらいシリーズは、さすがに沸々と笑いがこみ上げてきましたけどね。繰り返しますが、本作はホラーとしてではなくSFファンタジー、加えてコメディ的なノリで見ると大いに楽しめました。
何より忘れられないのが、父ジャックを思わせるバーテンダー登場のシーン。俳優が一瞬ジャック・ニコルソン本人かな?と思う程似てたのでびっくりしたんですが、やっぱり違うことが分かると、そのパロディに見えてちょっと苦笑い(大事なシーンだけに)。のち、ジャックを演じているのは、『E.T.(1982)』の主人公エリオット役で知られる俳優ヘンリー・トーマスと判明し、よくぞあそこまでジャック・ニコルソンに寄せられたよなぁ・・・と違う意味で感心してしまいました。
そして物語は終幕へ-。
ダンが自身の「シャイニング」を使ってホテルの亡霊たちをローズの元へおびき寄せ、彼女を餌食にすることに成功。が、ローズ一人をあっという間に喰らい尽くした彼らは、次なる餌食としてダンを襲撃。
亡霊に乗っ取られたダンは、斧を持ってアブラの後を追いかけます。そしてアブラを攻撃しようとしますが、アブラは強力な能力をもってそれを回避。そして彼女に諭され一瞬正気を取り戻したダンは、今のうちに逃げるよう彼女を促します。間もなく逃げるアブラ、そして乗っ取りに抗い続けるダン。
ダンは地下のボイラー室へ。ここで彼はアブラに危害を加えないためにも、自身をホテル(亡霊)もろとも燃やし尽くすことを決意します。やがて辺りが炎に包まれていく中、今は亡き母ウェンディがダン(幼きダニーの姿)の目前に現れ、二人は互いに微笑みを向けるのでした。この一連の流れは、キング原作の『シャイニング』のラストを持ってきた感じですね。
そして物語は、アブラがシャイニングでダンと会話をしている場面で締めくくられます。この二人の関係性には、かつてのハローランとダン(ダニー)のそれを窺うことができます。まるでシャイニング若手の行方の守護役が、次の世代へと引き継がれているかのようです。
最後、ダンはアブラに告げます。自分に与えられたギフト「シャイニング」を隠すことなく “shine on (輝いて)”と。という感じで、綺麗にハッピーエンドで幕を閉じた本作でした。
感想をまとめると・・・
本作は、キング原作小説『ドクター・スリープ』の世界観(あらすじ)に、本来キングが自身の原作『シャイニング』で描こうとしたものを肉付けした感じ。最後にダンが自分を取り戻し自己を犠牲にする展開も、まさに『シャイニング』の原作(小説&1997年TVドラマ)のエンディングと重なる。一方のキューブリック版『シャイニング』は、自己犠牲的とは程遠いエンディングとなっている。
よって、キューブリック版『シャイニング』の続編ホラーというよりは、キングの世界観を体現した独立作品という印象。原作通り「シャイニング」能力を前面に押し出す本作なので、この点においても、能力より「ホテルそのもの」に焦点が当てられたキューブリック版とは一線を画していると言える。恐怖の根元(敵)が曖昧なところがホラーなキューブリック版に対し、ヴィランが具体化された本作はファンタジー要素が強め。
原作、映画両者のファンを満遍なく楽しませる続編をつくるのは至難の業。最終的に「リスキーなのによく作ったな〜!」と、フラナガン監督の勇気に拍手を送りたくなる。気になる点はあれど、個人的にはとても愉快で楽しい作品だった。
■ おわりに ■
以上、『ドクター・スリープ』のネタバレ感想でした。いかがでしたか?
少しでも皆さんのお暇つぶしになったら、嬉しいです。他にも色々と書いているので、よかったらどうぞ。ではでは、またー♪
YOU MAY ALSO LIKE・・・
・アナタの狂気も明るみに…映画『ミッドサマー』ネタバレ感想&あらすじ
・【後半ネタバレ感想】映画『IT/イット2』原作ファンも納得の続編?あのシーンも登場?【比較】
・予告から怖い『ヘレディタリー』あらすじ感想(後半ネタバレ)
・『Us/アス』後半ネタバレ感想:考察する程にホラーが増すスルメ映画
・これぞ喜劇!?映画『ジョーカー』ネタバレ感想:ラストまで観客を嘲る男。
・映画『ホテル・ムンバイ』高評価の裏には悲しい実話。後半ネタバレ感想
“Happy belated new year!”
で合ってます?(笑)
年末は一人で過ごす事になり、DVD借りまくって引きこもろう!
って思ってたのに「インフルエンザA」にかかってしまい・・・・
1/2~1/9まで寝込んでしまいDVD全く見られない!
お酒好きな私が飲酒もせず「おせち」も「お餅」も食べられず
スープだけ溶かして飲む!箱根駅伝見て寝る。。。
って言う2020年をスタートしたCHIです。
唯一 観られたのは FINAL DESTINATION のみ(笑)
LEECAさんのおススメの映画 借りたのに・・・・
リベンジします(笑)
そうそう ドクタースリープ!これ映画館で観たかったのに、
もう上映終わっちゃったと言う。
これもDVD出たら観ます。。(ジョーカーもね)
それとまだ上映されてませんが「ジュマンジ2」見に行きます。
大画面でロック様を拝みたい。あとセクシー教授(笑)
今年もblog拝見させていただきつつコメントしますが、
宜しくお願い致します(笑)
CHIさん、
とんでもなくご無沙汰しておりました!!!
これまでも毎度不定期なブログ更新ではありましたが・・・^^;CHIさんはお元気でしたか?返信が本当に遅れてしまい申し訳ないです(涙)。未だ世界は未曾有のパンデミックの最中ですし、本当にこの一年で色々と変わってしまいましたね。。。私もいつ日本に帰ることができるのやら。
今は映画館で映画を観ることさえままならない状況ではありますが、何より健康第一ということで、CHIさんもお身体には気をつけて日々過ごしてくださいね!ブログ更新しましたらまたぜひ遊びにいらしてください♫♫♫ (遅ればせながら・・・今後ともよろしくお願いいたします♡)