【どこまでが実話?】映画『アイ,トーニャ』ネタバレ感想
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まいど、Leecaです。
本日は、実際に起こったスポーツ史最大のスキャンダルを描いた伝記映画、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 』をご紹介します。
主役のトーニャを演じるは、映画『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クインで一躍人気者となった、マーゴット・ロビー。
本作は果たして、どこまでが実話に基づいているのでしょうか?気になる真相についても掘り下げながら、本作のあらすじ&感想を綴っていきたいと思います。ネタバレありです。
『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』
■ ざっくり、あらすじ ■
原題:『I, Tonya 』
ジャンル:ブラックコメディ伝記
監督:クレイグ・ガレスピー
製作国:アメリカ
公開:米=2017年12月、日本=2018年5月4日
上映時間:121分
アメリカ人では史上初となる『トリプルアクセル』を成功させた、トーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)。
このまま彼女の偉業が後世へと語り継がれていくはずだった。
しかし、1994年1月6日、リレハンメルオリンピックの代表を決める全米選手権の会場で起こった事件が、彼女の運命を一変させる。
その事件とは、トーニャのライバルであったナンシー・ケリガンが何者かに襲撃され、選手権を欠場に追いやられたというものであった。
結果的に選手権ではライバル不在のトーニャが優勝したのだが、後に『ナンシー・ケリガン襲撃事件』の首謀者として浮かび上がってきたのは、トーニャの夫ジェフ・ギルーリー (セバスチャン・スタン)であった。
やがて、事件に関与する人物の一人にトーニャの名も浮上し・・・
『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』
■ 感想 ■
トーニャ・ハーディングがアメリカ人では初となる、『トリプルアクセル』を成功させた1991年。それからスポーツ史上最大のスキャンダル『ナンシー・ケリガン襲撃事件』が起こったのが、1994年。
当時まだ幼かった筆者は、この事件についてはほぼ知らず。主役トーニャを演じるマーゴット・ロビーが、本作でどんな演技をみせてくれるのかな〜?なんて、本作を鑑賞したのもちょっとした好奇心からでした。
でも、意外や意外!
耳心地のよい70~80年代の曲と、疾走感溢れる映像がすばらしかったですね〜!躍動感溢れるスケーティングのシーンなんて、ほんとリアルでした。
劇中で何度か流れた、ローラ・ブラニガンの『グロリア 』が最高でした♥
前知識ゼロでも楽しめる良作。
痛快なコメディタッチで、飽きも来ず最後まで楽しめました。
しかし、これが実話ってどんだけ〜(IKKOさん、元気かな)という話。
出て来る人、みんな頭オカシイ。
トーニャを育てた超スパルタの毒母も、トーニャのDV夫ジェフも、トーニャの元ボディーガードのショーン・エッカートも。誰一人例外などなく、見事なまでにまともな人がいないのですよ。ナンシーを襲った男も間抜けだったし(※追記あり)。
そして残念ながら、トーニャ自身もちょっと・・・口の悪さや、腕っ節の強さは描写されてましたね。
ただ面白いな〜と思ったのが、本作を通して「アメリカの嫌われ役」であるトーニャへの理解が進むという点。加害者のレッテルを貼られて叩かれ続けてきた彼女も、実は被害者であったということが示唆されてる点です。
表面的に語られるトーニャの世間一般のイメージと、トーニャ自身の視点/言い分とのギャップは興味深かったですね。劇中でも夫のジェフとさえも言い分が異なる様子が描かれているあたり、常に「誰からも理解してもらえない人生」を歩んできたのかな〜なんて思ったり。
少なくとも「加害者/悪者」というレッテルを貼るでなく、観る者に解釈を委ねたオープンな作品だったので楽しめました。トーニャ役のマーゴットが、「今のは私やってないからね 」なんて感じで観客に向かって語りかける辺りとかですね。トーニャも共謀していたと信じてやまない人々からは、批判をうけてましたけど。
さすがに、トーニャの生い立ちなんぞを知ったら同情したくなりますよ。特筆すべきは、英才教育という言葉を隠れ蓑にし、虐待まがいのスパルタ教育をおこなったトーニャの母親ラヴォナ・ゴールデン。これで子供がグレない方がおかしい、とまで思わせる毒母ぶり(毒母についても追記します)でした。
白人低所得者(蔑称でいわゆるホワイトトラッシュ)の家に生まれ、実母にもマペットのように扱われていた幼いトーニャ。叩かれても這い上がる「不屈の精神」は見習いたいところです。
と同時に、人生における親との関係の重要さを再認識。やっぱり親に対する考え方なんかも、再度点検必要だよなと。本作でトーニャの辛い過去を知り彼女を応援したくなる気持ちと、彼女が未だに母ラヴォナに憎しみのような感情を抱いていることを知り、ちょっとやるせない気持ちにもさせられました。
キャストに関しては、マーゴット・ロビーがすばらしかったです。どちらかというと、美しい容姿を前面に押し出した女優の印象が強かった彼女ですが、本作ではトーニャに成りきってましたね(身長差をはじめ、何から何まで見た目が違うのに)。ハーレイ・クインを演じた女優の面影なし!てことで、実力派女優としての顔を知ることができて良かったです。
実力派女優といえば、母ラヴォナを演じたアリソン・ジャネイが凄まじかった・・・!迫力ありすぎて・・・あんなお母さん嫌ですわ、絶対。
『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』
■ 真相をチェック ■
真相全てに迫ることはできませんが、本作がどこまで実話に基づいた話なのか、ざっくり調べたのでシェアしますね♪
①トーニャへの虐待
トーニャの夫ジェフも母親のラヴォナも、共にトーニャに対する暴力を否定しています。劇中では、「ラヴォナが投げたナイフがトーニャの腕に刺さる」場面や、「ジェフが自分の頭に銃を向けた後、逃去ろうとしたトーニャを銃撃した」場面が描かれています。
これらの出来事の裏付けはとれないようですが、ラヴォナがヘアブラシでトーニャを叩いたのは事実だそうです。本人も認めていますし、こちらのドキュメンタリーにも目撃証言(1:50〜)が収録されています。
②うさぎの毛皮のコート
劇中では、幼少期のトーニャが父親手作りの“うさぎの毛皮コート”を着用している場面がありますが、これはフィクションだそうです。The New York Timesの記事によると、毛皮のコートは手作りではなく購入したとのこと。
③審査員への“Suck my dixx”発言
米トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ! 』にマーゴットが出演した際、劇中のトーニャが審査員へ暴言を吐くシーン(6:16〜)についての真相に言及しています。
事実としては、本物のトーニャは “Suck my dixx”とは発言していません。ただ劇中の台詞が気に入った彼女は、「実際に言えばよかったわ 」とマーゴットには語ったそう。
しかし、審査員がトーニャの派手なピンクの衣装にいちゃもんをつけたのは事実。リンク上でなかったにしろ、舞台裏で「そんな衣装を今後着るな!」と暗に言ってきた審査員がいたそうです。トーニャはこれに対し、「あなたが仮に衣装代5,000ドル持ってきたら、私だって衣装を手作りしなくていいんだから。それまでは失せてて 」と言い放ったとのことです(The Price of Gold より)。
④靴ひものトラブル
劇中でも印象的な場面として描かれている、トーニャのスケーツ靴の紐のトラブルは実際に起こったことです。
舞台は1994年のリレハンメルオリンピックで、その時の様子がこちらの映像でご確認いただけます。これはスキャンダル後のことなので、まさに、ナンシー(負傷から回復)とトーニャのどちらが勝利をおさめるのか世間が注目していたときです。
⑤ナンシー襲撃当時の様子
トーニャのボディーガードだったショーンに雇われ、ナンシーを襲った男の名はシェーン・スタント。劇中で描かれているとおり、彼はナンシーが練習を終えリンクからおりたところを襲撃しました(実際の映像はこちら)。
《右からショーン⇒夫ジェフ⇒シェーン》
劇中では、ナンシーを襲撃したシェーンがガラス戸を割って逃走する場面がありますが、あれも事実です。ガラスをぶちやぶってしまうなんて何とも間抜けですが、彼は捜査の手掛かりも沢山残していたらしく、警察にすぐ捕まったそうな。
⑥メダル授与式でナンシーは不機嫌だった
1994年のリレハンメルオリンピックではトーニャは8位入賞、ライバルのナンシーが銀メダルを獲得。劇中でトーニャが、メダル授与式でのナンシーの態度に腹を立てている場面がありますが、ナンシーの態度が最悪だったのは事実です(ただしメダル授与式前:0:42〜)。
本大会で金メダルを獲得したのは、ウクライナのオクサナ・バイウル。オクサナのメイク直しの為メダル授与式が遅れていると聞いたナンシーは、「勘弁してよ。どうせ泣くんだから意味ないじゃない 」等と発言し反感を買うことに。てか、表彰台で睨みきかせてますね。
しかしですね、遅れはオクサナの所為ではなく・・・運営側のトラブルだったそうですよ。あれま〜
■ おわりに ■
以上、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』についてお届けしました。
いかがでしたか?
事件の真相は本人のみぞ知るところですが、まさにスポーツ史に残るスキャンダルとして、今世も語り継がれていくことでしょう。
ちなみに本物のトーニャは、事件の後は2年ほどボクサーとしても活躍したそうですよ。ガッツありますね。
それでは、また。
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