アカデミー作品賞獲得!『シェイプ・オブ・ウォーター』R15ネタバレ感想
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みなさん、こんにちは。
今回は『シェイプ・オブ・ウォーター 』のご紹介です。
ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したのち、アカデミー作品賞・監督賞・美術賞・作曲賞を獲得した話題作です。
R15(オリジナルはR18+)ということで気になっている人もいるかもしれませんね。
早速、その内容についても触れながら、あらすじ&感想(ネタバレあり)、あとは配色の意味についても言及してみたいと思います。
■ ざっくり、あらすじ ■
原題:『The Shape of Water』
ジャンル:ファンタジー・ロマンス
脚本監督:ギレルモ・デル・トロ
製作国:アメリカ
公開:米=2017年12月、日=2018年3月1日
上映時間:123分
音楽:アレクサンドル・デスプラ
舞台は1962年、冷戦下のアメリカ。
イライザ(サリー・ホーキンス)は、メリーランド州ボルチモアにある政府極秘研究所で、清掃員として働く毎日を送っている。
元々孤児だった彼女は、映画館の真上に位置するアパートの部屋で一人暮らしをしており、ゲイの隣人ジャイルズ (リチャード・ジェンキンス)が唯一の友人であった。
生まれつき首になぞの傷跡があり、発話障がいも抱えるイライザ。ジャイルズや同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)とは、いつも手話でコミュニケーションをとっている。
ある日、イライザがいつも通り清掃の仕事をしているところへ、謎の生物が南米から研究所に運ばれてきた。
好奇心溢れるイライザは、その生物が “人間のような両生類=半魚人” であることを発見する。以来、隠れて半魚人のもとを訪れることが日課となったイライザに、半魚人も次第に心を開いていく。
そうして生まれた、両者の絆。
やがて二人の絆は深まっていき・・・・
■ ネタバレ感想 ■
いつもお決まり、評判だけ耳にしてトレイラーもろくに見ずに鑑賞した本作。なんだか妙に、『The Shape of Water 』というタイトルに惹かれてしまって。
『水の形』か・・・。
なんだか神秘的で奥が深そうな映画だな。←読みは浅い
というわけで、タイトルから芸術性を感じさせる夢物語を想像したのですが、ズバリでした。
ギレルモ・デル・トロ監督の作品では他にも『パンズ・ラビリンス 』なんかも好きなので、そもそも、彼が生み出すファンタジーの世界観が好みなのかもしれません。
本作も私の好みでした。
これはきっぱり、好みが分かれるでしょうけどね。
いつもホラーばかり見ている私としては、「自分にもまだメルヘンな乙女心があったのだ 」という驚きをもらえたのも可算ポイント。そこ?って思いました?そこです。
ホラー鑑賞で痛いシーンには耐性がついてきたはずなのに、半魚人や優しいドクターが虐げられている様子はみていられませんでした。悪役ストリックランドを演じたマイケル・シャノン、最高でしたね〜!憎たらしくて。
でもそんな彼も、じつは上司からの圧力をうけてストレスいっぱいなんだろうな〜って。鏡の中の自分を鼓舞するシーンはみてられなかったですもの。悪人であることには変わりませんが。
冷戦下という状況において表出した人間の醜さの象徴的人物ですよね。読んでいる本が、米大統領トランプも愛読しているという『THE POWER OF POSITIVE THINKING 』なのもミソですよね。
彼も含め、孤児で言葉のきけないイライザ、彼女の隣人でゲイの絵描きジャイルズ、同僚で黒人のゼルダ(彼女の煙草仲間も黒人たち)、共産主義者のドクター、そして半魚人・・・・みんながみんな、それぞれで孤独・葛藤を抱えている。
これは当時の時代背景だけでなく、現代の世の中でも通じるな〜としみじみ。メキシコ生まれの監督だし、トランプ政権を風刺している節があるのかも。
《普段は大人しいイライザにも激しい一面が。
そして同僚のゼルダはいつだって救世主》
たしかにプロット自体は単純で最後の展開も読めてしまいます。善人のロバート・ホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)は最終的には殺されるだろうし、イライザも最後は半魚人(river’s god)と結ばれるだろうなと。
⇒ 二人の結ばれ方の読みはハズれましたが。
イライザが生きたまま半魚人と駆け落ちってパターンかと思ったら、息絶えた彼女を道連れってパターンでした。
物語の展開が読めたと言ってもヒヤヒヤさせられる場面は多かったし、それぞれの登場人物の描き方と演技がキッラキラ光っていたので、上映時間が123分ではあるものの冗長とは感じませんでした。
イライザを演じたのが “絶世の美女” とかではなくて(失礼)、身近にいそうな等身大の女性サリー・ホーキンスだったのがまた良かったですね。そこは監督自身、絶対に譲れなかったポイントだったそうですし。
《笑顔がチャーミング♥
アーティステックな雰囲気漂う、素敵な女優さん》
というわけで(?)本作では超絶面食いのみなさんに、目に見える美しさ以外のモノにも目を向けてほしいなと思います。友情とか愛とか優しさとかって、形なきものですからね。
というのもですよ。
私もかつては母親から、「あんた本当面食いね 」と言われた過去がありまして。いや言っても、高校まであんまり恋愛に興味がなかったので、全員芸能人でしたけどね。
そんな私も大学時代、どういうわけか一度だけイケメンとお付き合いさせて頂きましたけど、まぁ素の自分出せませんでしたよね。当時の私にこそ「ありのままの〜♪」が必要だったというお話。まぁ、ありのままを見せていたら付き合ってなかったでしょうけど。
それで「ありのままの自分を出せる人じゃなきゃダメだわ〜。顔なんて関係ない!」と学び、出逢ったのが今の主人です(←もっていき方)。主人も同じ気持ちだと思いますが。国際結婚なので “異人種” どうしということで、まぁイライザたちと同じようなものでしょう(ちがうか)。
そもそも、半魚人と人間の組み合わせに眉をひそめてしまう方もいらっしゃると思います。が、エンディングで「実は僕、人間でした〜 」みたいな展開よりかは好印象でした。ありのままの御姿を愛したげてよ、と。
イライザにとっては半魚人はイケメン(割れた腹筋、筋肉、高身長)だったかもしれませんけどね・・・
容姿に限らず、地位・権力(これには必ずお金も絡む)にばかりフォーカスしてしまうのも、切なすぎる。そんなものはあの世へ持っていけないものなので、結局はそれ自体が大切なのではないってことだろうし。
監督が時代を1962年に設定したのにはアッパレというか、感心してしまいました。その背景があるからこそ登場人物たちがよりリアリティを持ってくるので(半魚人が存在していたということですら)。
なんだかんだ申してきましたが、ハリウッドが大好物の『多様性を受け入れる』という点に重きを置いて鑑賞すべきというのは、あまりにも押し付けがましいと思うので・・・
難しいこと考えず鑑賞するのが一番だと、個人的には思います。
この映画の構想は監督が幼い頃から練っていたらしいので、もっとシンプルで他を想う優しい物語と考えていいと思うのです。悪役ストリックランドでさえ人間味をもって描いている監督、ほんとうに優しいよな・・・。
二人が浴室で抱き合うシーンは『見てはいけないもの』を見てしまったようなそんな気分にもさせられますし、未知との遭遇という意味でも単純に楽しめますけどね。ハッピーエンド♡(と解釈)なのもよかったです。
あとはコンセプト然り、映画冒頭いきなりのイライザ自慰シーンなんかもあるのでR15指定なのも頷けますね。なぜか悪役ストリックランドのベッドシーンもあるし。極めつけは、イライザと半魚人の交わりでしょう。
そういったある種の危うさみたいなものを感じつつ、ものすっごい笑える場面もあったり。そのバランスがまた絶妙。イライザが同僚ゼルダに、彼との初体験を説明するシーンは笑えました。ゼルダのリアクション最高。本当にいいキャラしてます。
半魚人とイライザの初対面のシーンも、声をあげて笑ってしまったほど。半魚人、お目目クリクリで可愛いなって。ちょっとさかなクンを彷彿させるような。そしてゆで卵好きとしては、差し入れがゆで卵っていうのもよかった。
でもなんでゆで卵なんでしょうね?生命の象徴とかでしょうか。
イライザと半魚人とのダンスシーンが挟んであったり(クサくて笑えたけどよかった)、“空想の世界” を美しい映像で描いていて素敵でした。主人公の空想に耽るところや映画の色味なんかは『アメリ 』を想い出し、芸術的に仕上がっていると思いました。
このシーンの雨雫が美しかった。
水中シーンも、思わず息をのむ美しさでうるっと感動。
最後はイライザのなぞの傷跡が、半魚人、いやGODの手によってエラに早変わり。もともと彼女は、そっちの世界の人だったのかもしれませんね。お風呂で自慰するくらいだし。
■ それぞれの色が持つ意味とは? ■
劇中でやたらと“みどり色”が目についたのは、私だけではないでしょう。イライザたちの清掃着・キーライムパイ・研究所・Jell-O・キャデラック・書籍・キャンディーなどなど挙げると結構ありますね。
ジャイルズが持ち込んだ赤色のJell-O(アメリカで人気のゼリー)広告も、先方に「Green is the color of the future 」と言われ断られるシーンがありました。つまり、みどりは未来を示しているということがここで分かります。
でも他の色はなんだろう〜?って気になっていたら、発見しました。監督が自ら配色について説明している文章を見つけてしまいました(これは意外)。
Color coding chart in SOW: Elisa’s world: Cyan and Blue (underwater) Everyone else’s homes (Giles, Zelda, Strickland) in Goldens, Ambers and warm colors (Day/air), Red for Cinema, Life and Love. Green: everything about the future (Pies, car, lab, uniforms in lab, gelatine, etc) https://t.co/JrwUoG5iGv
— Guillermo del Toro (@RealGDT) 2017年12月27日
- シアン&ブルー=イライザの世界
- ゴールドやアンバーの暖色=ジャイルズ、ゼルダ、ストリックランドらの家
- 赤=映画館、生命、愛
- みどり=未来を表すすべて(上述のとおり)
イライザの服装が、みどり色からラストは赤色へと変わっていっていることも、これで納得です。ストリックランドは「未来」にばかり固執していたのでしょうが、彼の家(庭)がジャイルズやゼルダの家と同じ暖色系でまとまっていたということも興味深いですね。
■ おわりに ■
以上、『シェイプ・オブ・ウォーター』についてのお話でした。
この映画は色の統一感といい映像が美しいことは前述した通りですが、あと忘れてはいけないのが音楽。
幻想的で切なく美しい、オリジナリティ溢れる音楽です。
個人的には、またゆっくり見直してみたい作品。
本作に関するトリビアもこちらの記事でつづっているので、ご参考までに♡
それでは、また。
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