犯罪心理と米史が学べる!お勧めTVドラマ『The Alienist(エイリアニスト)』
こんにちは、Leecaです。
今回は、アメリカのテレビドラマ『The Alienist (2018)』についてお届けします。まず、Alienist(エイリアニスト)とは精神科医のことを指します。
昨年末あたりから本作の予告編がテレビで流れているのをみて、「これは見逃せない!」とかなり興味をそそられていました。
今回は、本作のあらすじ&筆者の初見の感想&キャストのご紹介をしていきたいと思います。ネタバレはいたしません。
Here we go!
■ The Alienist あらすじ ■
製作国:アメリカ
放送会社:TNT
ジャンル:クライム/サイコスリラー
公開日:2018年1月22日
時間:60分/エピソード
シリーズ:全10話
主演:ダニエル・ブリュール、ダコタ・ファニング、ルーク・エヴァンズ
舞台は1896年のアメリカはニューヨーク。
物語の幕開けは、ある少年売春婦が犠牲になった凄惨な殺人現場。
精神科医のラズロー・クライズラー(ダニエル・ブリュール)は、友人で “ニューヨーク・タイムズ” 記者ジョン・スカイラー・ムーア(ルーク・エヴァンズ)にその殺人現場へ赴くよう指示をする。
ムーアの報告からDr.クライズラーは、過去にも同様の手口による殺人事件が起こっていることに気づく。そう、ニューヨークでは少年売春婦が惨殺されるという事件が多発していたのだ。
やがて、ニューヨーク市警察本部長のセオドア・ルーズヴェルト(ブライアン・ジェラティ)は、Dr.クライズラーと記者ムーアにこの連続殺人事件の解決のための特別捜査の許可をだす。
彼ら2人のほか、ルーズベルトの元で働く市警初の女性秘書サラ・ハワード(ダコタ・ファニング)、巡査部長のアイザックサン兄弟をむかえ、捜査は本格化をみせる。
一行は、はたして殺人鬼の正体を突き止めることができるのか。
■ 筆者の感想&米国での評価 ■
◎筆者の感想
まだ公開になったばかりで数話しか観ていないのですが、ずばり毎週月曜23時(アメリカでの放送時間)が待ち遠しい、今日この頃です。
予告編の時点で心をがっつり持っていかれていたので、正直「ちょっと期待しすぎたかな?」って部分はあるんですけど。それでも、十分に楽しめる仕上がりの作品になっていると思います。
『The Alienist 』は1994年に発売されてベストセラーとなった、カレブ・カー著の同名の小説がベースになっています。日本でも『エイリアニスト ―精神科医 』というタイトルで、ハヤカワ文庫より上下巻が発売されています。
申し遅れましたが、わたしは原作を読まずに本作を鑑賞しています。
よって、“alienist”と聞いても全くもってピンと来ず。
《こんなのが真っ先に頭に浮かぶ始末》
と言うのも・・・
本作では前述のとおり、精神科医(犯罪心理学者)という意味で使われていますが、現代だと“psychiatrist(criminal psychologist)”が一般的な呼び名だからです。
「殺人者は生まれつきのものである 」
本作の舞台になっているのは19世紀。
当時何らかの精神病を患った人々は、生来の本質的な姿から断絶されてしまった人という認識だったそうで。
そういった意味からも、彼らは社会から隔離・取り残される存在(=alien)だったのでしょう。ゆえに精神科医は、『精神を病んだ人々の心の深奥の探求者』という意味から“alienist”(-ist =〜をする人)と呼ばれていたのでしょうね。
今でこそ、たとえば『幼い頃の環境・体験に人の人生が大きく左右される』ことも当たり前の事実として、世間一般で受け入れられていると思います。ホラー映画のベースになるような世界で知られる連続殺人犯たちだって、結構な割合で幼いころに劣悪な環境で育っていることが分かっています。『IT』の殺人ピエロのベースとなった人物もしかり(※参照記事:事実は小説より奇なり)。
でも昔は、普通に暮らしていたらそういった、加害者側から見える世界でものを見る、という発想自体まず思いつかなかったはず。貧富・階級の格差なんかも激しく、とくに下の階級の貧しい人たちさえも置き去りの社会でしたから・・・。だから殺人を犯した者が精神を患っていたとしても、それは生まれながらのものだという思い込みもでてきたことでしょう。
ゆえに本作のDr.クライズラーのように、殺人鬼がどういった経験を通じて心の闇を抱えるようになったのか、という視点を貫く者こそ当時は異端児だったんだろうな〜って。しかし、いつの時代でも『真理』を追及する人ってのは素敵だなと思いました。
まだ序盤にも関わらず「真理の追及には、それなりの代償が必要になってくるんだろうな・・・」という予感がゾクゾク。本作が全10話でどのように帰結するのかが非常に気になるところです。
なにより映像がとっても美しいです。
それもそうのはず、噂では1話に500万ドル(5.5億ほど)かけているとか・・・もはや映画。TNTはそんなに大きな放送局とはいえないのに、豪華キャスト&製作陣をそろえて巨額の予算をつぎ込んでいるので、なぜか自分が「どうか成功に終わりますように 」と気が気でないという・・・←変なとこで世話焼き
これもアメリカのテレビドラマのクオリティが、年々高くなってきている証拠ですよね。気合いの入り方が 異常 違います。ちなみに気になるロケ地は、ハンガリーのブタペストだそうですよ。
個人的には、予告から本編までこの映像美にひっぱられている、といっても過言ではないかもしれません。こんなに綺麗じゃなかったら、そもそも観ていないかも・・・それほど、ダークな世界観が繊細にうつくしく描かれていると思います。
私はグロテスクさは感じませんでしたが、人によっては目を背けたくなる場面があるかもしれませんので、そこはご注意を。
それから、
犯罪心理はもちろん、歴史の勉強にもなる映画という印象。
もちろん、本作がこれからどこまで細かく犯罪者の心の内をあぶり出していくのかにも懸っています。
ただ本作でDr.クライズラーは、「殺人鬼がなぜあんなにも惨い殺し方をするのか 」ということを身の危険を顧みずにどこまでも追ってしまう、相当なマニアックな人物として描かれています。←さっきまで素敵とか言っていたのに
よって、いかにして殺人鬼ができあがったか、ということには十二分にフォーカスしてくれるはず。いや、そうでないと成り立たない作品なので、犯罪心理含む心理学に興味がある方は新しい知識を身につけるいい機会になるかもしれません。
それから黒人のお抱えドライバー(馬車)、欧州の移民たちの登場からみえる『人種差別』はもちろん、『貧富・階級(権力)格差』がひどい時代背景が描かれているので、色々とみえるものがあり勉強になりますね。ちなみに、巡査部長のアイザックサン兄弟も敢えてユダヤ人であることが分かるようになっています。
ここまで書いておきながら、私自身は全部英語でストーリーを追うのにかなり必死でした(前のめり+目を細める+大口開けて鑑賞)。
この類の作品は、やはり普段聞き慣れない英単語や専門用語なんかが出てくるので、個人的にはそこも勉強になりました。ニューヨーク市警察本部長のルーズヴェルトを“Commissioner(コミッショナー)”と呼んでいたり、役職名なんかも勉強になります。
◎アメリカでの評価
気になる本国アメリカでの評価ですが・・・
(傑作とはよべないが)まぁ良し◎
というハーフラインよりは、やや高めな評価。
やはりベストセラーとなった原作本のファンの中には、3人の人間模様などが原作に忠実でないとして最低評価を与えている方も目立ちました。本作は一応、原作本著者のカレブ・カーもコンサルティング・プロデュースとして携わっているようなので、ちょっと残念な気もしますが。
他にあがっていた批評としては、役者たちの演技がイマイチだということ。私はストーリーを追うのに必死で、細かいところまで目を凝らしてみる余裕がなかったのですが、中にはそういう意見もありました。もちろん人によっては、最高の演技だとする人もいますので、The 賛否両論。
でも確かに、ルーズヴェルト役はほかの人でも務まる気も・・・(最後に毒を吐いて去る)。
■ 一流のキャスト・制作陣 ■
①ダニエル・ブリュール/精神科医ラズロー・クライズラー役
《右はグッバイ、レーニン!のとき
年を重ね渋さが増したご様子 ©IMDb 》
1978年6月16日にスペインのバルセロナで生まれ、すぐにドイツに移り住んだブリュール。10代からテレビで小さな役を演じていた彼は、2003年の世界的大ヒット作品『グッバイ、レーニン!(Good bye, Lenin!)』によって、役者としてその名を世に知らしめることに成功します。
最近だと『ラッシュ/プライドと友情(Rush)』でニキ・ラウダ役、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(Captain America: Civil War)』ではヘルムート・ジモ大佐役も好演しています。
見るからに頭がキレそうな彼ですが、スペイン語・英語・フランス語・カタルーニャ語を流暢に話すほか、ポルトガル語も理解できるとか。本作でも(おそらく)イタリア語を話す場面もあり、その言語能力にはうらやましくなってしまう程です。
元々にじみ出る賢さと、心を読ませないようなクールな雰囲気が、本役に十分活かされているのではないでしょうか。目は優しいけど口元は薄く涼しげな印象です。
あと興味深いのが、プライベートで2010年から交際している女性が心理学者であること。2016年には彼女との間に、お子さん(息子)も一人もうけているようです♡
②ルーク・エヴァンズ/記者ジョン・スカイラー・ムーア役
《映画ホビットにて。オーランド・ブルーム(右)に
目がいってしまいます♡ ©IMDb》
1979年4月15日にウェールズ出身の俳優で、歌を学びロンドンの学校には奨学金で入学。その実力のとおり、2000-2008年の間には『レント 』や『ミス・サイゴン 』などの有名なミュージカルにも出演していました。
アメリカの映画に出演するきっかけになったのが、2010年『タイタンの戦い(Clash of the Titans)』でのアポロン役。その後『ホビット(The Hobbit)』3部作にて弓の達人バルド、最近だと大ヒットした『美女と野獣(Beauty and the Beast)』のガストン役などを好演しています。
プライベートでは、彼はゲイであることをカミングアウト。これを知っていると、本作ではちょっと際どく感じられるシーンがあったりなかったり。個人的にはセクシーで素敵な俳優だと思います♡が・・・私の昔の嫌みなイタリア人上司が彼にそっくりで、違う意味でも印象に残っております。←どうでもいい話が得意です
③ダコタ・ファニング/記者ジョン・スカイラー・ムーア役
《アイ・アム・サムにて》
1994年2月23日、アメリカはジョージア州生まれ。
ダコタ・ファニングといえば真っ先にうかぶのが、2001年の子役時代に演じた『アイ・アム・サム(I Am Sam)』のルーシー役ではないでしょうか。わずか7歳で各種新人賞を総ナメにし、天才子役と名高かった彼女。演技派女優として、美しく成長しました♡
2004年には日本が誇るジブリ映画『となりのトトロ 』のディズニー英語版で、主人公のサツキの声も務めています。私も例の英語版を観ましたが、とっても自然ですばらしい声の出演でしたよ。
子役の頃からそうでしたが、彼女は良い意味でどこか掴み所のないような、浮世離れした雰囲気が漂っている気がします。きっと容姿のファクターは大きいかもしれませんが、あの落ち着いた瞳をみると「この人には全て見透かされる気がする 」なんて思ってしまいます。←考え過ぎ
▶本作を支える豪華制作陣
制作陣の中でも注目されているのは、
キャリー・フクナガとジェイコブ・バブリューゲンでしょう。
まずキャリー・フクナガは、1977年カリフォルニア州はオークランド出身の映画監督です。名前からご想像のとおり、父親が日系アメリカ人三世とのこと。2014年の米国テレビドラマ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事 』のシーズン1の監督を務め、同年のエミー賞にて、ドラマシリーズ部門最優秀監督賞を受賞した実力者です。
当初は彼がメガホンをとる予定だったのが、スケジュールの関係で制作総指揮という位置づけになっています。
《エミー賞授賞式でのスピーチにて。よ〜く見ると、
ラーメンマンを彷彿とさせる髪型をしていらっしゃる》
そして実際に監督としてメガホンをとるのが、1980年ベルギー 生まれのジェイコブ・バブリューゲン。彼も2015年英国テレビドラマ『ロンドン・スパイ(London Spy)』の監督を務めたことで有名です。
《全身黒のコーディネートでキメる男》
とこんな感じで、気合い十分の本作。
果たして、どう転ぶのでしょうか・・・
私も今後の展開を見守っていきたいと思います。
そして原作本もぜひ買って読んでみます♪
日本でも早く公開されますように・・・!
それでは、最後までお付き合いいただき有難うございました。
See you!
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