米国では不評!?『オール・アイズ・オン・ミー』ネタバレ感想
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まいどっ!Leecaです。
今日ご紹介する映画は、
『オール・アイズ・オン・ミー(原題:All Eyez on Me)』。
25歳という若さでこの世を去った伝説のラッパー・俳優・詩人、2パックことトゥパク・シャクールの伝記映画です。
アメリカでは誰もが知っている伝説の男、2パック。
これまでに全世界で7500万枚以上のCDを売り上げ(桁違い!)、
史上最も影響力のある偉大なアーティストにも選ばれ続けています。
それでは早速、本作のあらすじ&アメリカでの評判も絡めながら、筆者の感想を綴っていきたいと思います。
■ あらすじ ■
・監督:ベニー・ブーム
・ジャンル:伝記
・製作国:アメリカ
・公開:2017年*6月16日(日本:同年12月29日)
・上映時間:137分
*2パックの誕生日
1971年、ニューヨークのスラム地区で生まれたトゥパク・シャクール(ディミートリアス・シップ・Jr)。継父ミュートゥル、実母アフェニ・シャクール(ダナイ・グリラ)は共にブラック・パンサー党員であり、黒人開放のために法をも犯す急進的な革命家であった。
そんな環境で育ったトゥパクは、幼いころから“黒人のプライド”たるものを教えこまれ、身近でも幾度となく社会の不正を目の当たりにする幼少期をすごした。そんなある日、FBIの指名手配をうけていたミュートゥルを捕まえるために、一家の自宅に警官がとつぜん押し入ってきた。ミュートゥルは捕えられ、トゥパクと妹は警官から身動きができぬよう暴力的に押さえつけられるという体験をする。
やがて成長するにつれて、母親の考えから距離を置き始めていったトゥパク。1986年に一家はメリーランド州ボルチモアに引越し、トゥパクもボルチモア芸術学校に通い始める。そこで、のちに“生涯の友”となるジェイダ・ピンケットと出逢う。学校ではシェイクスピアの演劇での役を演じあげ、みんなの人気者であった。
だが母親の都合で、1988年には遠く離れた西海岸はカリフォルニアに移り住むことに。かつての面影もなく母親アフェニが薬物に溺れる中、トゥパクは詩を書き溜めながらラッパーになることを決意。
オークランドで人気だったヒップ・ホップグループ『デジタル・アンダーグラウンド』との活動を通して、ラッパーとしてその才能を開花させていったトゥパク。音楽のみならず、俳優としての才能もまた発揮していく。
1991年にはソロデビューアルバム『2Pacalypse Now 』を発売し、彼はそこから知名度を上げていった。しかし、1994年にレイプ疑惑で告発され、1995年に判決が言い渡される前に5発もの銃弾を浴びてしまう。この裏には東海岸のラッパーたち(ノトーリアス・B.I.G.やディディ)が絡んでいると踏んだトゥパクは、シュグ・ナイト(ドミニク・L・サンタナ)から保釈金を積んでもらい、出所。
それからは、東海岸レーベルと真っ向対立。
こうして始まったヒップ・ホップ界の東西抗争。
バトルが激化した1996年9月7日、ラスベガスにて銃弾に倒れたトゥパクは、6日後の13日に命を引き取った。
■ ネタバレ感想 ■
ついあらすじが長くなってしまいましたが、ここからは私個人の感想を。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』の感想でも既述ですが、まずヒップ・ホップはそこまで詳しくない筆者です。
それでも、アメリカ人の義父や主人が2パックを好きなアーティストに挙げていた事から、私も名前と楽曲数曲、彼の人生については何となく ぼや〜っ とは知っておりました。あとは『ストレイト〜 』に感化され、観賞前よりか知識は増えました。
とはいっても、別に詳しくはない。
そんなスペックで臨んだ本作でしたが、どうだったかと申しますと・・・
普 通 に お も し ろ か っ た で す 。
↑小学生並みの感想(いや、小学生にも失礼だし)。
あのですね、実はアメリカではあまり評判が芳しくなくてですね。ぶっちゃけて言えば、はじめから期待しすぎなかったのが良かったのかもしれません。中盤からはやや冗長な印象だったのものの、それでも2パックの活躍をリアルタイムでみていない場合、彼の人生を淡々と知るにはいい映画だと思いました。
逆に、熱烈な2パックのファンであったり、ヒップ・ホップのあれこれに詳しい方であれば、物足りなさを感じる人も少なくないでしょう。色々と知っているからこそ気づくポイントがあって、事実とのギャップに違和感を感じてしまったりね。
そもそも、137分という尺に人の一生を詰め込むなんて無理がありますけどね(←元も子もない)。とくに2パックの生涯は25年と短いながらも、普通の人であれば一生体験できないであろう出来事の連続だったわけで。
(あれ、わたし25の時何してたかな・・・・うん、比べるのはよそう)
ゆえに、彼の “THUG LIFE” のどこを切り取って焦点を当てるか・・・・・・う〜ん、非常に難しい選択ですよね。どれもハズせねぇYO!となり、あの獄中インタビュー形式で順を追って進めていく形に落ち着いたのかもしれません。
各場面の繋ぎが雑、あるいはツギハギと言われればそうかもしれないけど、私はそこまで気になりませんでした。駆け足の展開に置いてかれまいと必死だったからかな。
細かい部分はどうであれ、観て良かったです。
2パックの人間性・音楽性が垣間みれただけでも、大収穫◎
2パックという男は、偉大で多くの事を成し遂げてきた分、その裏の私利私欲(特にシュグ)にまみれた世界もいっぱい目にしてきたんでしょうね・・・・そして人並み以上に感情の振れ幅も大きかったに違いない。
革命家の血を継ぐ者としてこの世に生を受け、悪く言えば母親の都合で引越しを強いられて。周囲の子供と比べてもシングルマザーで貧しかったこともあり、母親を恨んでは妹と傷を舐め合った幼い日々。
そしてコカイン中毒になった母親に失望し17で家出した2パック。その後母親もリハビリ施設に通って、麻薬を断ち切る道をえらんだことを知り仲直り。
こうして紆余曲折ありながらも、2パックは無条件の愛を注いでくれた母親を、とーっても大切に想っていた・・・・『Dear Mama 』が彼の胸中を語ってくれていますね。劇中でこの曲が流れたときは、おもわずウルッときてしまいました。2パックって、心根の優しい男、ですよね。
心からの友だったジェイダ・ピンケット(ウィル・スミスの現妻)の存在からも窺えるように、女性にいつも囲まれていた自身のことを“フェミニスト”と呼んだ彼。実際に、母親・仲間・愛する女性へ捧げた『Unconditional Love (YouTubeで聴く)』という、心にじーんとくる曲も作っています。
他にも、シングルマザーに宛てた曲『Keep Ya Head Up(YouTubeで聴く) 』もおすすめです。ちなみに以前こちらの記事でご紹介した、ファンクバンド“Zapp”の『Be Alright 』をサンプリングとして使用しています。
そんな彼だからこそ、金銭目当てで寄ってくる女性のことを「Bitch」と汚い言葉であえて呼ぶことで、女性へ悟りを促すような内容のリリックを紡ぎだしたのでしょうね。言葉の意味も(行動も)、受け手次第でいかようにも変わることがよく分かる作品だと思います。
※参照☟Wonda Why They Call U Bitch
「ビッチと呼ばれるのは何でだ」と問題提起
女性を大切に想う彼だからこそ、レイプの罪を問われたときは、女性から裏切られたように苦しかっただろうな・・・と法廷のシーンでは同情せずにはいられなかった。有罪判決を言い渡された瞬間は、やるせなさがどっと押し寄せてきました。
あぁ、不条理。
よく、「彼は矛盾を抱えた人間だ!」という意見を耳にします。ただ私の目にはむしろ逆に映っていて、根底には「THUG LIFE を歩む= 自分の正しいと思った道/正義をゆく」という強い意志が一貫してあるよなって。
感情がある以上、人間だれしも矛盾さを抱えて生きているのは事実。2パックも周囲の目から見たら矛盾だらけと一蹴することもできるでしょう。そもそも、世の中矛盾だらけとは思うんですが・・・
思うに、結局すべての出来事を体験したのは2パック自身だけなのであって、そこには矛盾もなにも彼自身にしか分かり得ない、彼からの立場・正義みたいなものがあったのだろうな〜と。
もしあの服役中のシーンが本当ならば、あの環境下で「怒り」の感情が噴出してくるのも無理ありません。やがてそれが猛烈なパワーとなって、出所後の東西抗争に身を投じることになったのも頷けます。でもこのバトルもメディアの煽動によって、本人の意に反して、ドラマティックに仕立て上げられてしまったらしいですね。
何はともあれ、彼の繊細な心の動きが少しでも分かるようなストーリー展開になっていたのが良かったです。
あと単純に、2パックを演じた俳優ディミートリアス・シップ・Jrが似てる!
バンダナ姿なんて特に。演技もよろし◎
ちょっと本人よかチャビーだったのは・・・・・目をつぶろう。
あとはスヌープがそっくりと驚いた方も多いのでは?
それもぞのはず、声は本人のをかぶせたとか。
■ 賛否両論の評価をチェック ■
〜 酷評組 〜
①パックの親友:ジェイダ・ピンケット
Forgive me… my relationship to Pac is too precious to me for the scenes in All Eyez On Me to stand as truth.
— Jada Pinkett Smith (@jadapsmith) 2017年6月16日
残念ながら劇中での2パックと彼女とのシーンが、真実に基付いていないと訴えています。どうやら、2パックが彼女にポエムを読んだことは一度もなく(なんなら詩の存在すら知らなかった)、舞台裏で口論になったこともないそうな。え・・・・制作側もそこまで捻じ曲げる必要性があったのかな。
②50セント
アメリカのラッパー、50セントも最低評価。「ゴミ」とまで言い放ちました。気持ちは分かったけど、ゴミってすごいな。
③一般の声
どうやら、劇中の2パックがアップル・ウォッチを身につけているとの噂が。私は確認できませんでしたが、それが事実だとしたらとんでもない時代錯誤ですね。
〜 絶賛組 〜
①MCハマー
Everything seen,said and done ain’t meant to be in a movie. #AllEyezOnMe is an EXCELLENT TRUTHFUL portrayal of my LOVED one. I Salute it.👊🏾💯 https://t.co/MJ8Me8efGA
— MC HAMMER (@MCHammer) 2017年6月16日
劇中の描写に嘘はないと絶賛。敬意まで表しています。
②The Game
カリフォルニア州コンプトン出身の人気ラッパー。観に行って、友達にも広めてくれよ、とかなり推してる様子。「この映画が大好きだから、批評する奴や2パックについて悪くいう奴はうせろ!」とFワードも飛びだしてます。酷評が多くてイライラしてるのかしら。
■ おわりに ■
以上、2パックの伝記映画のあらすじ&感想でした。
2パック、まだ生きているなんて噂もあるようですね(この説もおもしろい)。キューバあたりで。
今回もまた長文になってしまいましたが、最後まで読んで下さってありがとうございます。
それでは、また!
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