深読み不要!映画『ベイビー・ドライバー』ネタバレ感想&あらすじ
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みなさん、こんにちは。
昨晩一足遅れて、2017年話題作のひとつ『ベイビー・ドライバー(原題:Baby Driver)』を鑑賞しました。
アメリカ国内、さらには日本での評判もいいことを知っていたので、ずっと気になっていた映画です。個人的に、カーアクションは観始めたらノってくるんですが、自分から進んでみるジャンルではありませんでした。
でも本作がカーアクションに音楽が掛け合わされていると知り、これは!と思って鑑賞した次第です。
それでは早速、劇中の「なぜ!?」って場面も踏まえつつ、私なりの感想(ネタバレあり)&簡単なあらすじ等をご紹介していきたいと思います。
■ 簡単なあらすじ ■
主人公ベイビー(アンセル・エルゴート)は、ジョージア州アトランタで強盗の「逃し屋」としてドライバーを務める青年。イヤホンでお気に入りの音楽を聴きながら、逃走劇に加担する日々を送っていた。
一見おさなく無口なベイビーであるが、実は天才的なドライブテクニックの持ち主で、彼の手にかかれば警察を巻くのもお手の物。
そんな彼は幼い頃に両親を交通事故で亡くしており、自身もまた“耳鳴り”が常にやまない病状を抱えていた。そんな現実から逃れるように、彼はいつもイヤホンから流れる音楽によって、その耳鳴りを打ち消していた。
両親が亡くなってからは里親のジョセフ(CJ・ジョーンズ)のもとで育てられたベイビー。ジョセフは耳と足が不自由であったが、ベイビーはそんな彼の世話をしながら、二人で慎ましく仲良く暮らしていた。
いかにも心根の優しいベイビーが「逃し屋」になった背景には、強盗計画首謀者のドク(ケヴィン・スペイシー)という男の存在があった。
実はベイビーには、ドクの車を盗難しようとした過去があり、ドクはベイビーに“代償”として強盗のドライバーを務めるよう脅し続けていたのだ。
犯罪社会から一刻も早く足を洗いたいベイビーであったが、ドクとのしがらみがあって抜け出せずにいる。
そんな日々の中で、ベイビーはとあるレストランでウェイトレスとして働くデボラと出逢う。急激に惹かれ合っていく二人は、いつしか恋人のような関係に。
そのタイミングで、ドクが「最後の仕事」という約束のもと、新たな強盗計画にベイビーを誘う。その仕事も成功に終わり、デボラとの恋愛を楽しもうと思った矢先。
ドクがまた現れ、脅し文句で新たな強盗計画をベイビーに伝える。強制される形で仕事を引き受けたベイビーであったが、彼にもまたある考えが浮かんでいた。
しかし、強盗実行犯のメンバーである、バディ(ジョン・ハム)、ダーリン(エイザ・ゴンザレス)、バッツ(ジェイミー・フォックス)たちは、いつもと違うドクの雰囲気を嗅ぎ取っているのであった。
■ 感想(ネタバレあり) ■
まず出だしから、なんじゃこりゃぁぁあ〜!(松田優作様より拝借)の連続でした。
いかにも怪しい黒尽くめの男女が、車から颯爽と銃かかえて出てきたかと思ったら、そのまま銀行直行。ここで強盗犯かと分かる。そして彼らは無駄にオシャレで、そのまま Dior の広告になってもおかしくない出で立ち。
もうその誇張感だけで「いやいやいやいや!」って吹き出してしまったんですが、そこからお抱えのドライバーが見るからに若いぞとなり、みんなどういう関係?ってなり。
?マークが頭に浮かんでる時に、そのドライバーがいきなり音楽にノリだして。
そのちょっとイケてないDJみたいなノリ方にしろ、先の強盗メンバーの洗練さにしろ、この映画かっこつけたいの?と思ったほど。でも沸々とした笑いがどこからともなくこみ上げてくるのです・・・・お、面白い。
ひとり微笑していたその時に、テンポよく逃走シーンがはじまり。ベイビーのあまりにもキレッキレな運転技術に、自然に身体は前のめりになり、3台の赤い車が横並びになるシーンでは、思わずわぁ〜と感嘆。
絶えず流れるアップビートな音楽と、ファンタスティックな(←響きが好きなだけ)運転の疾走感、それに視覚に訴えてくる鮮明な色彩。なんじゃこりゃぁああ〜!が止まらない。
そんなこんなで映画スタート早々から、気づけば完全に意識を持ってかれました・・・・。警察を撒くベイビーに、肩入れしまくり〜な私。なんかよく分からんけど、いけいけ〜!という感じ。なんでか分からんけど。
そしてうまくベイビーが警察を撒ききったところで、こちらの息切れもおさまります。カーアクションとか普段観ないからヒヤヒヤするなと思いましたが、音と映像両方で、駆け抜ける気持ち良さも同時に体感。あぁ〜なんて清々しいんだ!←誰ですの
そして、ベイビーがみんなのコーヒーを買いにいくあの場面。カーアクションで上がった息を落ち着かせてくれるような、のほほんとしたミュージカルのような一時。なに、この映画。
ここで「ラ・ラ・ランドみたいだな・・・」と思った筆者ですが、やはり世間様も同じこと言ってましたね。映画全体を通しての感想は「ラ・ラ・ランドっしょ!」とはなりませんでしたが、このシーンは確かにMVやミュージカルのようでした。
なんとなく、M.I.Aの“Paper Planes ”という曲を想い出させるような主旨のシーンでしたね。
※小ネタを挟みますが、デボラ役は本来エマ・ストーンが演じるはずでしたが、奇しくも「ラ・ラ・ランド」出演のため降板したそうな。
話をもどして。
その後コーヒーをみなに配るベイビーの横で、ドクが盗んだお金を仕分ける作業をする場面になります。そこで流れる音楽とドクの動き(札束をテーブルに並べる)がピタリと重なって、
「カ・イ・カ・ン 」by 薬師丸ひろ子
↑いうても世代じゃない ↑
こんな風に音と動き・文字を緻密に合わせるのに、ものすごい労力が要ることはド素人のわたしでも容易に想像できるほど。ベイビーがコーヒー買いに行くシーンは、28テイクもしたそうです。
日々の生活で何気なしに耳にし、気にも留めない音や風景。それが魔法にかかったように、新たな世界にみえるとき。
うっわ、急にかっこつけみたいで恥ずかしいんですけど。
そういう瞬間って誰もが体験していることだと思います。
「今日はこの音楽!」って気分や場面によって音楽を選び、街を闊歩する。ベイビー並に酔いしれずとも、すくなくともニヤリなんてする瞬間ありますよね。音楽の携帯が当たり前の現代では、音楽を装備して戦場へ向かうじゃないけど、そういうシーンって多いのかなって。少なくとも私は、日本に住んでいるときはそんな毎日でした。
会社行くのがしんどい日にはこの曲、残業で疲れた後にはこの曲、わくわく楽しいイベント前にはこの曲、この通りを歩くときにはこの曲・・・という具合に。
だから個人的には、ベイビーの気持ちがよく分かるというか。ベイビーが常に音楽を聴いていたのも、耳鳴り抱えてたのが単なる理由ではなくて、ある種の現実逃避だったのかなとも思います。
にしても、ショックを隠せなかったのは、幼少期のベイビーがすでにiPodを持っている事実。私が小さいころはiPodなんてなかったよ。8cmの小型CDからのMDが主流だった80年代生まれですので、大学生にしてはじめてのiPodでしたがな。
このように、時として映画鑑賞は、我々に逃れられない現実を突きつけてくるのであーる。
あと笑ったのが、ジェイミー・フォックス扮するバッツとアジア系の男が強盗計画に加わったときの一コマ。いざ襲撃!というときに用意したマスクが、オースティンパワーズのマスクだったとき。
本当は映画『ハロウィン』の殺人鬼、マイケル・マイヤーズのマスクを準備するはずだったのに、アジア系の男が『オースティンパワーズ』の俳優マイク・マイヤーズと勘違いしてマスクを手配してしまったという・・・間違えたのがアジア人っていうのも・・・リアルでおもろ。
でもこのマスクの件、本当の本当はマイケル・マイヤーズのマスクを使用したかったらしいのですが、法的使用許可が降りず編み出された、苦肉の策だったようです。結果オーライ!
あと、最後のほうは急にグロさが増してビックリでしたが、リアルでよい。よって私は「いけいけ〜ぃ!」と見事にノれました。
あと忘れてはいけないのが、セクハラ問題で世間を騒がせているケビン・スペイシーの演技。やっぱり「知能レベルが異様に高くて悪い奴」という役がハマりますね。佇まいだけで役柄がにじみ出ているというべきか セクハラおやじというべきか。
ベイビーを演じたアンセル・エルゴートも、ベイビーフェイスで役柄にぴったり。イケメンなのかそうじゃないのか、よく分からないところも良かった。アメリカではティーンエイジャーからの人気急上昇中らしいですね。あと身体能力の高さには拍手!
ジョン・ハム演じるバディと、エイザ・ゴンザレス演じるダーリンの恋人コンビが、また絵になる〜!二人とも美男美女で、存在感がすごい。
ジェイミー・フォックスが演じたバッツもかなりキャラが濃くて、何度ハラハラさせられたことか。うまいなよなぁ〜。
世間における本作への評価をちらっと見てみると、どちらかというと「超傑作or超駄作」と評価の振れ幅がはげしい印象をうけました。でも、あきらかに最高評価を与えている人のほうが多い。
私は「おもろ〜〜〜!」と思ったので、いわば多数派の意見に賛同する形になります。ただ、最低評価を与えている人の意見にもなるほど〜って納得。これだから映画っておもしろいよな、と。
下に挙げるような疑問も浮かんでくるのは確かです。
●ベイビーとデボラの関係の発展が急すぎる
●デボラを想っているなら何故巻き込んだのか
●ベイビーは優しい男なのに盗難&銃撃をするのか
●デボラも立派な共犯者で捕まるべきでは
●なぜドクが最終的に良い奴になったのか
そう、「ご都合主義」といえばそうだよなという感じ。
でもなぜか、この映画に関しては「どっちでもえぇ〜 」と寛容な気持ちになってしまうから不思議。ベタな感じも含めて良いと思えてしまうんです。
一見、リアリティのない人物設定に感じるところも、よく考えれば “ありえそう”と思えてくる。エドガー・ライト(監督)マジックなんでしょうか。
若い二人(しかも実親を亡くした)の恋愛なのだから、急激に盛り上がる(逆も然り)こともあるだろうし。若いがゆえに好きな人を巻き込んだり、罪悪感がありながらも悪事に手を染め後悔することもあるでしょう。
ドクだって甥っ子の面倒をみていたり(うまく活用もしているけど)するのを見て、まるっきりの冷酷人間として描いてはいないよなって。
と、これはあくまで後から考えて付け加えただけの考察であって、劇中にはな〜んにも考えてませんでしたよ。ふふふ♡
つまり深読みしなくても、単純に楽しめる映画。
まぁ人それぞれでしょうが、久々に新しいジャンルの映画をみたような気がします。カーアクション×音楽×恋愛×クライムの要素を詰め込んだ、ありそうでなかった映画。
ヨーロッパ・日本のみならず、アメリカでも交通規制の兼ね合いから、激しいカーチェイスシーンを撮るのが年々難しくなっているとかで。もしかしたらこういうタイプの映画を作りたくても難しくなってくるかもしれませんね。
ということで、気になる方はぜひ観てみてくださいね。
では!
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