ツッコミ所が多すぎる映画『ヴィジット』 感想・考察(ネタバレ)
昨晩、『The Visit(ヴィジット)』鑑賞会を友人宅で開きました。
筆者がはじめてアメリカの映画館でみた映画作品ということもあり、個人的には想い出深い作品です。
そして昨晩2年ぶりに観たわけですが、いや〜やっぱりツッコミ所が多すぎておもしろいわ〜!と。
M・ナイト・シャラマン監督お得意のツイスト・驚きの展開もあり、また思い出したころに観たくなる映画です。
それでは今回は、私の映画の感想を思うがまま綴っていきたいと思います。※ネタバレ含
■ あらすじ ■
©YouTube: The Visit Official Trailer
主人公はフィラデルフィアに住む15才の姉ベッカと、13才の弟タイラー。
二人の母親ロレッタは、元夫(高校教師)の浮気が原因で離婚し、シングルマザーとしてベッカとタイラーを育てている。
ロレッタは15年前、元夫と駆け落ちするかたちで結婚して以来、実の両親とは連絡をとっていない。
そんなロレッタにも現在は新しいボーイフレンドができ、豪華客船クルーズにでかける計画があがっていた。
ベッカとタイラーの後押しもあり、クルーズに出掛けることにしたロレッタ。そして彼女は、クルーズの期間中、自分の両親のもとへ二人を預けることを決める。
ベッカとタイラーも、まだ見ぬ祖父母との面会を非常にたのしみにしていた。そしてこの祖父母宅への“訪問”を利用して、自分たちのカメラでドキュメンタリーを制作することにした二人。
そうしてペンシルヴァニアの祖父母の元での1週間の滞在は幕をあける。
・「楽しい時間を過ごすこと」
・「好きなものは遠慮なく食べること」
・「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」
到着早々、ベッカとタイラーは祖父母から3つの約束を言い渡される。
「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」
夜になって響いてくる物音に、さすがに異変を感じた二人はついに部屋の扉をあけてしまう。
そこで彼らがみたものとは・・・
二人が楽しみにしていた“訪問”が、思いもよらぬ方向へと展開していく。
■ 感想(ネタバレあり)■
まず、一言。
私はこの映画が大好きです。観て良かった。
主人公のベッカとタイラーが撮影しているというPOV方式でのストーリー展開には最初そそられなかったのですが、ふしぎと鑑賞中は気にならず。それどころかより二人に感情移入してしまう効果がありましたし、ベッカが自分でドキュメンタリーを作り上げる過程で、過去の自分と決別する結末をみてPOVでよかったと思えました。(あとカメラ酔いしないのが◎)
たしかに色々つっこみ所もあるんですが、「これないわ〜。」ってシラけるというよりかは、「うっわ〜そうきたか〜!」っていう驚きの意味でのつっこみが多かったです。
そうして気づけば、華麗なるミスリードに見事にハマッていったのでした。
自らの先入観もからまって、うまいことダマされた〜!となった筆者ですが、ダマされながらも思わずツッコんでしまった名シーンを挙げていきたいと思います。
◎ツッコミ所①:エクソシストばりのおばあちゃん
初日(月曜)の夜からやらかしてくれました、おばあちゃん。エクソシストの少女もびっくりの嘔吐シーンが待っていましたね。「あんなに綺麗に吐ける人なんていないよね〜(キャハハハ)」という友人の子供らのコメントに、おもわず笑ってしまいました。たしかに。もはやこの時点でホラー色はなし。
一体どう展開していくの。これってホラー映画だよね?と戸惑い隠せず。
◎ツッコミ所②:おばあちゃんの激しい露出
ディアナ・デュナガン(Deanna Dunagan)演じるおばあちゃん、翌日火曜日も軒下で遊ぶ子供たちのあとを今度は貞子ばりの迫力で追いかけます。でも一番びっくりするシーンははここではない。
軒下からでて二人の元をさっていく時の「おばあちゃん、おケツみえちゃってるよ・・・」のシーンです。半裸にエプロンの組み合わせをまさかこの映画でみることになるとは、誰も予測できなかったでしょう。って誰が考えるよ、あんなシーン。(シャラマン監督)
それと子供たちよ、なぜあえて軒下であそぶ。
あと同じ日の夜10時すぎ、またもやおばあちゃんが奇行に走ります。今度はおケツちら見せどころか全裸。
私たちは一体なにをみせられているのだろう。
一瞬困惑、からの大爆笑。
人って困惑したときには思わず吹き出すんだな、とこの映画を通じて学んだ瞬間です。
◎ツッコミ所③:基本、お母さんが色々と抜けてる
まず、お母さんのロレッタがぶっ飛び過ぎだと思うのは私だけでしょうか。「両親と長年会っていないから」が言い訳にならないような行動が目立っております。子供たちを祖父母宅へと送り出すまでの間に、本当の祖父母は殺されてしまっているわけで。
って、ロレッタさんよ・・・事前に祖父母宅へ連絡を入れていなかったのかと、まずそこにビックリ。子供たちだけでの旅になるわけだから、現実的に考えれば「よろしくね」の一言だけでも両親に伝えておくよなぁ〜とやけに現実的に考えてしまいました。
仮に電話をしていて声の聞き分けができなかったとしましょう。それでも子供たちが会ったこともない祖父母をみつけやすくするためにも、祖父母の写真をみせてもよさそうなもの。
そうでなくても、スカイプ繋がった時点であいさつしてもいいじゃない。(そういう心境になれない彼女の気持ちも分からなくもないですが)
ボーイフレンドとの時間を満喫している様子は、乙女そのものでおもしろかったですけどね。
これを言ったら元も子もないことは承知で言わせてもらいます。
お母ちゃん、あんがたもっとしっかりしていたらこんな展開にはならなかったよ・・・。
◎ツッコミ所④:おばあちゃんのクッキーのむさぼり方
滞在最終日の金曜の夜、ボードゲーム“ヤッツィー”で遊ぶ4人。おじいちゃんがいつものごとく失禁してしまった直後、おばあちゃんが壊れたようにクッキーを貪るシーンが本当に忘れられません。
ただのクッキーじゃなくておもいきり粉砂糖?まぶしたクッキーに笑ってしまいました。
口の周りがまっしろになっていく様からは目を離せなかったです。「おいおい粉が舞い上がってるよ〜」と思わずツッコミいれてしまうほど細かい演出もなされており、非常に楽しませてもらいました。もうこれ、コメディでしょ、そうだよね監督。
◎ツッコミ所⑤:何があっても撮影を忘れないプロ根性
こういうの言い出したらキリがないことは承知です。それでもおねえちゃんのベッカ、あなたすごいわね。私だったらとっくにカメラなんて置いて全力疾走しています。地下室にむかうタイミングがおかしいのもそうですが、ミッチェルに捕まって部屋に閉じ込められても尚、カメラを回し続けるその根性よ・・・。
本当のおばあちゃんじゃないことが判明したあとの、クレア(偽おばあちゃん)との取っ組み合いのシーンなんて特に「戦場カメラマン」かと思いました。
とツッコミながらも「自分が二人の状況にいたらどうするか?」ということを考えながらみるのが非常に楽しかったです。弟タイラーもよくがんばったね、本当に。極度の潔癖性の彼にはあまりにも辛すぎる(いや誰にとっても辛い)シーンがありましたが、彼はあの出来事で生まれ変わりました。
偽おじいちゃんのミッチェルにアメフトで鍛えたタックルを喰らわせるシーンでは、おもわず「行け〜!!!」とみんなで応援してしまったほどです。
◎ツッコミ所⑥:おそすぎる救出
救出がおそすぎるよ〜大人たち!
祖父母宅からは遠いところにいた母親の到着に時間がかかるのはわかります。
偽祖父母だとわかった瞬間ロレッタが警察に電話するシーン「ジェリー巡査は外出中で出られません」で、警察に繋がらなかったのも分かります。でも、警察の到着がおそすぎません?住所だって分かるし母親のロレッタを待つ必要もない。
子供たちに感情移入しきっていた私としては、非常にやきもきしてしまいました。よ〜うやく子供たちが救出されて、ホッとしたのは私だけではないはず。
と、色々「それを言っちゃおしまいよ」というツッコミを列挙しましたが、この映画の感想を語るうえでは欠かせない点でしたのでどうぞおゆるしください。
■ ちょっと気になったことを考察 ■
●ジェリー巡査
本当はサルサダンサーになりたかった “警察官ジェリー” の作り話をベッカがしているシーンが出てきます。まったく同じ名前のジェリーさんが上記⑥のシーンでも出てきましたね。「Deputy Jerry is away from his desk…」
いったい何を意味しているのか気になるのですが、謎は解明できず。
勘ぐったところで本当はまったく意味がなかったり・・・。作り話の警察官ジェリーはサルサダンサーになりたかったことから、勤務中にサルサでも踊っていて応答できなかったんじゃないか、とかひとりで考えてニヤけていた気持ち悪い人は、この私です。
●勘の良すぎるフェイク祖父母
クレアが隠しカメラを特定してばっちりカメラを覗き込むシーンは、「うわカメラ見つけられた」とその勘の良さにびっくり。精神病患者とはいえ、そういうところは頭がよく働くのですね。
とはいえ、包丁を持った自分の姿をカメラに映すクレアをみて、一体なにを主張したいのだろうと思いました。脅し?
その割には、最終日にミッチェルがなんども姉弟に異変はないかの確認をしてきますし。
本当はイカれた人を演じていただけ?なんて勘ぐってしまった私ですが、これは流石にないですか。
正常⇄異常のいったりきたりで、頭の中かき乱されました。
ミッチェルもクレアもそれぞれ自殺を示唆する場面では、ふたりが善悪で葛藤する人間らしさも描かれています。一方で、病院からチェックのためにやってきたサラを殺害→遺体はそのまま木につるしっぱなしの二人。
明らかにそんな目立つところに吊るしてたらバレるでしょうにって思ったので、二人は単純に精神おかしくなった人ということで片付けるのが賢明そうですね。そういう方に触れ合ったことがない筆者には、「やけに勘が働くな」と思った場面も、実はリアルな症例なのかもしれないということにしておきます。
でないと意味不明・・・
■ おわりに ■
ストーリーを大どんでん返しにしていたのは、自分のほうだった。たくさんの伏線があるのになぜ。
これもシャラマン監督の腕ですね。(幼い頃にみたシックスセンスも気持ちいいくらいドハマリした私です)
色々と疑問が残る場面はあるものの、爆笑あり・不気味さも多少あり・感動あり(登場人物それぞれが抱える問題を克服する)の良作だと思います。
私はあのオムツのシーンは笑い飛ばしましたが、苦手な人は本当に苦手なのでどうぞお気をつけください。
最後に。タイラーがいい味だしてる。
See you!!
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それは自身が真面目に映画に向き合ってこなかったからツッコミなどという安い言葉で逃げているだけだと思うんですが。
なぜ?と思ったらもっと作品自体が持つメッセージを正面から受け取ったほうがいい。
ホラー映画はそういった点で誤解を受けやすいですが深読みできる作品であることは間違いないです。
映画の中で起きていることは、映画の世界において全てが本当の事ですよ。
そこに演出が重なって心理の描写や物語になっていく。
ベッカさん、
返信がものすごく遅くなってすみません!コメントありがとうございます。
なるほど・・・ツッコミは入れてますがとても好きな作品なので、もう少し深読み出来るようにまた観てみたいと思います。
貴重なご意見、ありがとうございました。
昔の感想に失礼。
おばあちゃんの嘔吐シーンや謎の全裸、自分が観たときはゾッとしましたけどね…
子供にとって自分の保護者(いわゆる安心できる基地的存在)が異常行動を取ってる姿ってそれだけで極限にホラーだと思うわけで、アホな小学生が笑うのは分かりますが大人の感想としては少々あどけなさすぎる気がしました。
昼間の日常感(それもだんだんと崩れていきますが)と夜の異常感のギャップ、祖父母への疑心や子供特有のどうしようもない無力感、助けを呼びにくい陸の孤島という状況など、複雑な恐怖が盛り込まれた作品だと思いました。
ソレミヲさん、
いえいえ、コメントありがとうございます!
ツッコミを入れつつ、なんだかんだで私もゾッとしましたよ!笑
それこそソレミヲさんがおっしゃる様な、複雑な恐怖も感じました。
ただ、自分にまだ幼さが残っているのは図星です!!!笑
面白おかしく書いてますが、個人的にはとても好きな作品なので、気分を害されたらすみません・・・
たまに観返したくなる素晴らしい作品だと思います^^