祝!オスカー獲得!米社会の闇をぶった斬る映画『Get Out/ゲット・アウト』※ネタバレなし感想
出典:IMDb
アメリカでは2017年2月24日に公開したホラー映画『Get Out(邦題ゲット・アウト)』。
ホラー大好きな主人と一緒に、公開初日に観てきました。
(2018.3.4 追記:アカデミー脚本賞獲得しました!素晴らしい!おめでとう〜♡)
今回は簡単なあらすじ&筆者の感想をお届けしたいと思います。
これから観る方のためにもネタバレしないように気をつけて書きたいと思います。(ってネタバレのほうが嬉しいのか?)
■ 簡単なあらすじ ■
主人公はアフリカ系アメリカ人の男性クリス。
クリスはある週末、白人の彼女ローズの実家 “アーミテージ家” を訪ね、ローズの両親と初めて会うことになっていた。
深い森の中にひっそり佇むアーミテージ家。
そこにはアフリカ系アメリカ人の女性と男性の使用人が一人ずつ働いていたのだが、彼らの挙動にはどことなく違和感を感じずにはいられない。
それもそのはず、アーミテージ家にはある秘密が隠されていた・・・。
クリスも想像だにしていなかった衝撃の事実が暴かれていく。
■ 筆者感想(ネタバレなし) ■
アメリカでも公開前から大大大注目されていた映画で、レビューも非常に高くなんとRotten Tomatoesでは99%獲得しています。すごっ!
脚本・監督を務めたのは、アメリカの人気有名コメディアンの “Jordan Peele(ジョーダン・ピール)”。
今作が彼にとって監督デビュー作、しかもコメディではなくホラーということでも注目の的だったわけですが、個人的に「絶対おもしろいホラーを作ってくれるに違いない!」と確信していました。
なぜならば。
彼はコメディTV番組『Key&Peele(キー&ピール)』で“Keegan-Michael Key(キーガン=マイケル・キー)”と共に、脚本・主演・司会を務めていて、これが超絶面白いのです。ほんと、お腹よじれるレベルで。
※彼らのおすすめコントはこちらの記事でご紹介しております
《左がキー、右が監督のピール》
ネタ自体秀逸なのに、二人のコミカルな演技がさらにネタを際立たせます。彼の奇才なる脚本力をもってすれば、ホラーもどんとこい!というわけです。
そんなこんなで私も最初から期待大の映画でしたが・・・・いやぁ〜最後まで目が話せない良作ホラーで、気持ちよく映画館を後にすることができました(観終わってもやもやするのが一番切ないですからね)。
個人的にすごく印象に残ったキャラは、主人公クリス(ダニエル・カルーヤ)と使用人の女性ジョージーナ(ベティ・ガブリエル)、あとはアーミテージ家のパーティーに出てくる、これまたアフリカ系アメリカ人男性のローガン(キース・スタンフィールド)ですね。
まずクリスですが、奇妙な状況に置かれても尚、冷静に考えて対処する能力を持っていて好印象。その彼の賢さに、ある意味救われたと言っても過言ではないかも。感情移入が過ぎる私としては、迫り来るあの謎の不気味さはちょっと心臓に悪い・・・。彼がちんちくりんじゃなくて本当によかった・・・・ということで、クリスGood job!
あとは使用人の女性ジョージーナ。クリスもでしたが、彼女も目力がとにかくすごい!!そこ?って思うかもしれませんが、あの目力が役においてなんとも言えない気味悪さを助長しているので、非常に重要なポイントだと思いました。彼女が泣きながら笑っているシーンは忘れられません。観てのお・た・の・し・み。
それからパーティーで会った謎の男性ローガン。みるからに様子がおかしい。彼を挙げた理由は・・・ちょっとタイプ、というのは丸っきり冗談でもないんですが・・・♡ 彼の存在が、クリスにアーミーテージ家の秘密を暴くヒントを与えることになるからです。彼から発せられるある一言に、ぜひ注目していただきたいですね。
「期待して良かった 」と思わせてくれた点は、彼だからこそ描ける脚本でしょうか。これ、監督が白人だったら単なる差別映画といわれて終わりだったかも・・・?ジョーダン・ピール監督は、白人と黒人どちらの血も引いていますので。
非常にシリアスで奥が深いアメリカの闇を描いているにも関わらず、思わず笑ってしまうようなコメディ要素が含まれていることで、重すぎず観る側もちょいちょい小休憩できるところが良かったです。
シリアスすぎるのって、結構観ながら疲れるというか、考えても堂々巡りで自分まで沈んでしまう傾向にありますが、この映画は後からじわじわ〜っと考えさせられるものでした(事実、帰りの車中で主人と本作の感想で盛り上がる)。
この映画におけるホラー(不気味さ・異様さ)とコメディの絶妙なバランスは、コメディ経験値の高いピール監督だから為せる業なのではないでしょうか。
ホラー好き・嫌い関係なく、楽しめる作品だと思いますので、多くの方にぜひ観て頂きたい作品です。
■ おぉ、アメリカ・・・ ■
▶映画館でのアメリカ人の反応
私は映画館でこの映画を鑑賞したわけですが、一緒に観ているアメリカ人のリアルな反応が面白いの、なんのって。
映画のエンディングでは、みんな歓声&拍手!
劇中のリアクションが、やたらと大きい人が多いアメリカ。日本の映画館だとシーンとしていて、笑うべき場面でも遠慮がちに くすっ 程度じゃないですか。
アメリカはその点、各々自由〜にケラケラ声に出して笑ったり、しくしく泣いたり・・・・はいいんですが、ホラーにいたっては何かが起こるぞ!っていう緊張に包まれたシーンでも “OMG! It’s coming! ” とか口に出す方(主に中高生グループね…)も結構いたりして。イラっとするというよりも、こちらも怖さ半減で苦笑という話。
特に本作に関しては、まぁ〜際どい問題/アメリカ社会の闇の部分が描かれているので、周りの反応もなかなか興味深いものがありました。
劇中の「おいおい!それ言っちゃう!?」っていうシーンでは、“OHHHHHHH!!!!! ”と劇場もかなり沸いていましたよ。正直、どう反応していいのか困る場面も多かったのですが、私の真横にいた黒人の方の反応が大きかったので、私も何度かつられてリアクションしてしまいました。
▶アメリカ人家族・友人の反応
話題になっていた映画なので、私と主人以外にも、家族の中では主人の弟と弟妻が友人らと一緒に観に行ったそうです。
主人とは普段から色々と際どいアメリカの話(人種問題やらも)をしたりします。
私の主人はヨーロッパとメキシコの血を引くアメリカ人で、弟も同じ両親から生まれてきているので同じ血を引いています。それでも二人の間で、この映画に対する反応は全く違うものがありましたね。
弟妻はカントリー大好き!な白人女性なのですが、弟は彼女の友達(全員白人)と遊ぶことが多いようで、今回映画を観に行ったのも、その友達とでした。
私の主人はどちらかというとメキシコ系のお友達が多く、兄と弟といえその交友関係にも違いがみてとれます。
そんな訳で、弟夫婦と会った際に『Get Out / ゲット・アウト』の話になったので、主人と私が「良い映画だったよ!面白いからおすすめ 」というと、「うん!観にいきたいな 」と二人。
そうして後日、前述した友人らと実際に観に行ってきたらしいのですが・・・
「映画どうだった?」と感想を訊くと、二人とも微妙な反応。「うーん、なんかよく分からなかった 」と弟夫婦。アメリカ社会問題に斬り込んだ作品だから、答え辛いのかな?
・・・とここで、「あ、わたし何にも意識せずおすすめしまくってたわ 」とハっとした訳です。
なるほど。この映画におけるメインキャラたちはアジア系ではなかったので、割と冷静に(語弊なきよう)観ていられたのですが、人(race)によっては当然受け取り方も変わってくるわけで。先の例でいえば、白人として感じた複雑な感想を「分からなかった 」という返答でぼやかしてる可能性だってあるよな〜と。
アメリカに居るとrace(人種)を意識せざるを得ない場面に、こちらが意識せずとも直面します。よって、本作は相当センシティブな話題を含んだ映画であることは間違いないでしょう。題材はセンシティブなんだけど、切り口が鋭くて攻撃的でハラハラしてしまう。アメリカの根底に、裏側に潜んでいる「闇」を改めて開示してくれる作品です。
と、内容を伏せているため多くは語れないのですが。
なんでも「表立って見えるものだけが真実ではない」ということ。それだけアメリカ社会(はたまた世界)の闇は深く、リアルな世界が一番ホラーである。そんな事を軽快なタッチで訴えてくる、非常〜に優れた作品でしょう。
■ ま と め ■
この映画は、今期最もおすすめする映画の一つということで間違いないでしょう。
ぞくぞく、じわじわ〜っ と来る良作ホラーです。しかも笑える。
一度で二度美味しい、なんともお得な映画!
また、アメリカのみならず世界が抱える問題を提起している映画でもありますので、一度ご覧になることをお勧めします(私ももう一度観る予定)。
それでは、最後まで読んで頂きありがとうございました。
See you!!
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