【射撃体験】銃乱射事件が多発するアメリカで「銃規制」を考える
みなさん、こんにちは。
先日、屋外にある射撃場にて「実弾射撃の体験」をしてきました。
今回の目的としては、主人の同僚がはじめて銃を購入したので、他の友人もまじえて彼に銃の扱い方のレクチャーをするというものです。
アメリカの高校生たちによる『March For Our Lives(命のための行進)』という銃規制を訴える運動が大きな広がりをみせている現在なので、個人的にはあまり気乗りしなかったのですが、前からのプランだったので渋々ついて行くことに。
せっかくなので射撃場の様子と、筆者が実際に銃社会アメリカに住んで思うこと(銃規制について)も綴ってみたいと思います。※長文でございます
■ 射撃場へ到着 ■
今回訪れたのは、北カリフォルニアのリバモアにある射撃場『Rod & Gun Club 』。リバモアは、サンフランシスコから東へおよそ60kmに位置する都市です。
大自然に囲まれた、だだっ広い射撃場へ到着。
受付に行くと、「ここはショットガン専用射撃場だから、拳銃・ライフルはもう一つの射撃場へどうぞ 」とのこと。
「え〜っと、場所はあそこね!」と受付のおじさまが指差した先に目をやると・・・みんなのターゲットと同方向に位置する、丘の上ではあ〜りませんか(矢印で示した場所)。
これには我々も「ターゲットにされたりして 」と動揺しつつ半笑い。いや、笑えない。
無事、お目当ての射撃場へ到着。
(撃たれなくてよかた〜)
窓口にてまずは身分証明書の提示をし、「同意書」にサインをします。
次にレーン代と射撃代を先に支払います。あわせて50ドル弱。私たち含め7人で行ったので、3対4に分かれるように2レーンを借りました。
耳栓は持参し、メガネは2ドルで購入、ヘッドフォンは貸し出ししてもらいました。ちなみにこちらの射撃場では、銃の貸し出しは行っておりません。よって皆さんせっせと、銃や弾の入ったどでかいケースを抱えてやってきます。
実はわたくし、今回が2度目の射撃体験でして。
前回訪れた屋内射撃場は、銃の貸し出しをしていたので、どっさどっさと大きな銃を抱えて現れる人々の光景には目が点になりましたよ。
屋外は今回が初めてでしたが、音がこもらないので耳に(心臓にも)優しいのが良かったです。
おかしなアングルの写真で申し訳ないのですが、これが先のターゲット(的)シートの上に更に黒&赤のシールを貼ったもの。これで的の準備完了です。
こんな感じで殺風景ですが、全部で30レーンありました。レーン後半までほぼ埋まっていましたよ。客層は、アジア系も多いベイエリア中心に比べると白人の方たちが多かったです。年齢層は子供から大人まで幅広く、女性もちらほら。
初回の屋内射撃場では、立って射撃するスタイルでしたが、ここでは着席がルールのようでした。
ここでは、15分毎にターゲットの紙を張り替える作業(or 銃弾が貫通した穴をシールで埋める作業)が設けられています。ちなみに屋内だと、お好きなタイミングでブースに設置されたボタンを押せば、これまたお好きな位置にターゲットシートをスライドさせることが可能です(ロープウェイみたいで地味に楽しい)。
スタッフの方によるアナウンスが流れ、写真右上の赤いランプが点灯すると同時に、一斉に射撃を中断してレーンから出ないと相当怒られます。危険と隣り合わせですからね・・・・
とはいえ、ここのスタッフはちょっと怖すぎでしたけど。色々怖いのでルールは守りましょう。屋内射撃場はむしろスタッフの干渉が入らない所が多いので、それはそれでまた怖い面もあるのですが。
私は今回、主人の同僚の方に銃を貸していただき、射撃に挑みました。こちら↑がその銃で、22口径ライフル(twenty-two)です。正直、射撃時の大きな音と反動が苦手なので(射撃場にいる意味…)、この22口径は反動も少なくて初心者向けで打ちやすかったです。
あまりの打ちやすさに、一瞬「おもちゃ」のような感覚を覚えてしまうほど。
・・・・ゾっとしました(本気で)
銃の持ち主の彼にどこで購入したか尋ねると、『Walmart(ウォルマート)』だそうです。わお!アメリカ全土にある大型スーパーチェーンですって。しかし上述のように、低反動・低騒音に加えて低価格で人気があるため、なかなか店頭でも見つけられない商品なのだとか。
★ おまけ ★
約2時間の射撃を終え、その後はリバモアの街で美味しいピザを食べて帰ってきました。春とはいえ、屋外での射撃は寒さとの闘いでした。また行こう!とは思いませんが、アメリカならではの体験ですし、「銃の恐ろしさ」も身をもって感じることができました。
“Deep-dish pizza ”と呼ばれるこちらのピザ、ご覧の通りクラストが分厚い。シカゴ風だそうですね♪サイズはアメリカンでしたが、味はアメリカンな大味ではなく美味しかったです。
念のため、お店情報をば ☞ Paxti’s Pizza
■ アメリカで銃規制について考える ■
▶NRAと政治との癒着
もともと、アメリカ南北戦争の勝者である北部出身者や銃愛好家、銃販売者らによって設立されたのが『NRA(全米ライフル協会)』。彼らは、アメリカ合衆国憲法修正条項第2条:「武器を所持して携帯する権利」を盾に、一貫して銃規制への反対を表明してきました。
NRAは、共和党の保守層を中心とした政治家の会員も多く抱えています。そして巨額の政治献金をしているため、議会での支配力は相当なもの。もはや圧力団体です。
そしてもちろん、米大統領トランプが一番、NRAから貢いでもらっている事実も知られています。彼は、NRAを擁護する以下の発言までツイートしています。
What many people don’t understand, or don’t want to understand, is that Wayne, Chris and the folks who work so hard at the @NRA are Great People and Great American Patriots. They love our Country and will do the right thing. MAKE AMERICA GREAT AGAIN!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年2月22日
多くの人が分かっていない、あるいは分かろうとしないのは、ウェイン(NRA会長)やクリスをはじめ、NRAで一生懸命働いている人々は素晴らしい人たちで、偉大な愛国者だということだ。彼らは我が国を愛していて、正しいことをしようとしている。アメリカを再び偉大にしよう!
そんなバリバリのNRA支持者であるトランプ大統領は、「教師が武装していれば事件は防げる」という主張を前面に押し出し、これもまた大きな話題となりました。
▶「銃規制は難しい」に立ち向かう高校生たち #EnoughIsEnough
今年2018年2月14日、フロリダ州パークランドの高校で起こった銃乱射事件は、みなさんの記憶にも新しいかと思います。この乱射事件で17人の生徒の尊い命が奪われました。
《©COED – 銃規制呼びかけの中心を担う生存者の生徒たち》
そしてその事件の生存者の生徒たちが中心となって、SNSを駆使した銃規制運動が全米に波及しました。アメリカはこれまで、銃乱射事件が起こったときに銃規制の議論がなされるだけで、結局それも一過性で悲劇を繰り返すパターンが続いてきました。
しかし、今回は様子が違います。#EnoughIsEnough(もう沢山だ)等とハッシュタグをつけて、SNSで彼らのメッセージを世界へと発信し、世界中で注目を集めています。彼らが主催したワシントンでの集会には、なんと80万人もの参加者が集いました。
▶恐怖に支配されるアメリカの人々…?
以上のことを受けて、私も在米の身としてあれこれ脳みそを沸騰させながら、銃規制の是非について考えてみることに。その過程で、「アメリカ人は銃規制についてどう思っているのだろう?」と疑問が湧き色々サイトを巡ってみたのですが、50/50という印象を受けました。
銃規制反対派の意見には次のようなものがありました。
●もう銃器は出回っている。悪い輩が突然襲ってきた時に、自分の大切な人や自身を護る術として銃は必要
●映画やビデオゲームが問題だ
●銃自体が問題なのではない。銃を扱う人間の質に問題がある
まず私の意見としては、「銃規制賛成」です。
もちろん難しい問題だということは承知の上でです。
映画やビデオゲームが悪の根源だという上の意見に関しては、アメリカ国内だけでなく世界に目を向ければ、これが主たる原因ではないことが分かると思います。
やりたい放題のアメリカの暴力的なゲームに『グランド・セフト・オート』が挙げられますが、ネット上では「俺はあのゲームが大好きだけど、一度も人を撃ちたいと思ったことはない 」という声もありました。ちなみに私の主人もたまにプレイしていますが、全くもって暴力の前兆なしです(言い方)。
ゲームや映画ときたら、音楽。
ということで、マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画『ボウリング・フォー・コロンバイン(原題: Bowling for Columbine)』を想い出さずにはいられません。銃乱射犯がマリリン・マンソンのファンだったと(でっちあげ)報道され、マンソンが批判の的になっているところを、ムーア監督がインタビューしています。
《©IMDb – マイケル・ムーア監督》
ロック(メタル)ファン、あるいはホラー映画ファンである一個人としては、「銃に関わる犯罪」全ての責任をエンターテイメントの類に押し付けることで、問題のすり替えをしているだけのような気がしてなりません。
また、上述の「銃を扱う人間が問題であって、銃は問題でない 」は一見聞こえはいいですが、そもそもの話、一般市民がいとも簡単に銃を入手できる社会自体がおかしい、という感覚が欠如していることに気づきます。普通に暮らす中で銃が必要な社会ってどんな社会?・・・と。
よって、いずれも「銃規制できないことへの言い訳探し」にしか聞こえません。また、銃規制について考えるとき、乱射などの他殺はもちろん、自殺についても考慮したいところです。
と、ここまで「銃規制賛成」の意を表してきましたが、日本のように国をあげて『銃刀法』を制定するとなれば、違憲だ!等と暴動が起こることも予測されます。アメリカ全土には、ミリシアと呼ばれる武装民兵組織などもありますし、かなり厄介なことになるだろうことは容易に想像できます。
メキシコからの銃器密輸(ドラッグも)阻止も重要になってきますが、どうも闇は深いでしょうね。
《©Ranker – ミシガンミリシア》
ネットを見ていると、よく日本の治安の良さが引き合いに出されているのを目にします。そもそも国の成り立ちや文化も違うし、国民性・・・に関してはなんとも言えません(逃げ腰)。
ただ日本史においても、昭和33年に銃刀法が発効されるまでに、『廃刀令』が明治9(1876)年に発令されています。これを発端とし、明治10(1877)年には最大の士族反乱である西南戦争が起こりました。今のような治安の良い日本も、かつてはそういった歴史を辿ってきたのですよね。
日本=侍=刀というステレオタイプが今でも根強いですが、一定層のアメリカ人にとっては今でも銃がアイデンティティーの一つなのでしょうか。だとしたら、繰り返しになりますが、かつての武士のように銃規制への反感が生まれてアメリカは大混乱に陥るかもしれません。
そこは私はアメリカ人ではないので知り得ません。しかし、言っても時代はどんどん進化しています。今、銃規制をしなければ、いつするのでしょうか?
今でしょ! (おそらく一番時代に取り残されているのは、この私)
もう銃が出回っているのだから護衛が必要というのは、ここアメリカでは無視できない現実ではあります。無抵抗の人を狙ってやってくる悪い輩も現れるでしょうから。でもアメリカに住んでいてひしひしと感じること、それは「怯えながら生活する人があまりにも多い」ということです。
「いつ誰が家に侵入してくるか分からないから怖い 」「夜道を一人で歩くのが怖い 」など、日々の暮らしが恐怖ベースの感情に支配されてしまっていることには、渡米間もないころ一番驚いたことです。私の義母や義叔母もいつも警戒しています。確かに日本は平和ボケ過ぎると思いますが、でもアメリカより治安がいいのは事実ですからね・・・
恐怖に支配されることのない、みなが住みやすい世界。その道のりは長いでしょうが、悪化の一途を傍観するよりは、一歩踏み出すほうが賢明なのではないでしょうか。
■ おわりに ■
以上、アメリカの射撃場の様子&銃規制のお話でした。
拙い長文、最後までお付き合いいただいて、どうもありがとうございます。
みなさんにとっても、少しでも考えるきっかけになれば幸いです。
では、また。
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