ラストは涙!手紙が気になる『A Ghost Story』ネタバレ感想
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こんにちは、Leecaです。
ちょっと遅ればせながら、気になっていた映画『A Ghost Story(ア・ゴースト・ストーリー)』を鑑賞しました。
タイトルにGhostとありますけど、ホラー映画ではございません。いうなれば、ファンタジー&ちょっとロマンス。シュールな映画の部類に入るかもしれません。
では早速、あらすじ&感想(ネタバレあり)、それから手紙の内容についても考察していきたいと思います。
Here we go!
■ ざっくり、あらすじ ■
原題:『A Ghost Story』
ジャンル:ファンタジー・ロマンス
脚本監督:デヴィッド・ロウリー
製作国:アメリカ
公開:米=2017年7月、日本未公開
上映時間:92分
音楽:ダニエル・ハート(ロウリー監督の友人)
出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ他(カメオ出演:Ke$ha)←監督が好きだから
テキサス州ダラス郊外の小さな一軒家に、ミュージシャンの夫 “C” (ケイシー・アフレック)と妻 “M” (ルーニー・マーラ)が暮らしていた。
妻Mは引越すことを熱望していたが、夫Cはこの家になにか繋がりのようなものを感じていて、どうも離れる決断ができない。
ある日突然、夫Cは車の交通事故で命を落としてしまう。
だが間もなく、白い布を頭からかぶった姿=ゴーストとして再び目を覚ます。
悲しみに暮れる妻M。
それを為す術もなく、ただ見守るゴーストのC。
MもCの存在には気づかない。
ゴーストとしてMに寄り添う日々を過ごしていたが、彼女との別れは突然やってくる。
そんなCに待っている運命とはー。
■ ネタバレ感想 ■
うわ、なんだろう・・・この感情。
そうだな〜
いうなれば、
「 切 な い 」
(溜めるまでもなかった)
前評判が良かったのは知っていたんですけど、ホントそれだけ。トレイラーすら観ず、ぶっつけ本番で臨みました。
だから、あんまり期待とかしてなかったのですけれど。
あれ、なんか込み上げてくるものが・・・
非常にエモーショナルな映画です。
しかも、割と序盤から。
『A Ghost Story 』っていうタイトルから、てっきりホラーだと勘違いしてたので、余計ふいを突かれました。いや、でもね、私とおんなじ人沢山いると思うんですよ〜(仲間がほしい)。
白い布が全身に被せられた遺体の状態から、ムクッと起きるあのシーンは、ちょっと唐突で笑っちゃったんですけど。ハロウィーン定番の“いかにも”な出で立ちだし、あれ?これコメディーかな?って。
でも、そこから妻Mがいるお家にとぼとぼ歩いて(か浮いてるかは知らんけど)向かっていく時の、あの淡い草の緑と布の白のコントラストが美しくて。その映像美に魅せられ、世界観に引き込まれました。これはインスタ映えする・・・
ゴーストCは、なーんにも言葉を発しないし、とにかくゆ〜っくりと静かに物語が進んで行くんですよね。だからこそ、バックで流れる音楽もよく映える。こちらも、より集中して音を拾える。
各シーンと音楽が絶妙にマッチしていて、こちらもすーっと違和感なく物語に入り込んでいけたので、アート作品のようで感動すら覚えました。個人的には、音楽含めとても好きな世界観でしたね。
現実とファンタジーって紙一重だよな・・・
そんなことを考えてしまった作品。
いっそのこと『A Human Story 』と呼んでもいいかもしれません。
ちょっと微妙だなと思った点を挙げるならば、
Cを失くしたMが、チョコレートパイ(アメリカらしい)をひたすら頬張るシーン。「ながっ!」ってなりました。すみません。あのシーンこそ最高だという意見も理解できます。
でも、長かった・・・(マジで)。
「あのパイを食べるシーンがテイク3だったらどうしよう」と、なぜかどうでもいい事を考え始めてしまい、Mを演じるルーニー・マーラの胃袋が心配になってしまったんです(実際は1テイクだったようで安心)。
おまけに私自身、その時ミルクシェイクを飲み終えて満腹だったので(なんなら若干飲みすぎて気持ち悪かった)、あの全部平らげそうな勢いでパイをがっつく彼女を4分以上も眺めるのはキツくて。
つい堪えきれず、「Stop eating! 」と(ガチで)画面越しの彼女に語りかけてしまいました。彼女が洗面所へ立ち上がった瞬間の開放感ときたら、なかったです。フリーダム!
でもあのシーンは重要ですよね。←フォロー感がすごい
最初は丁寧に切り分けて食べていたのに、途中から無我夢中でパイを喰らう。グサグサっとフォークを豪快に刺して食べる姿からは、彼女の胸の内、怒りも同居する深い哀しみが伝わってきました。
このシーンと冒頭のベッドで二人寄り添うシーンがあるからこそ、それぞれのシーンにおける『時間の経過』の差が際立っていますし。「20歳過ぎたら時間経つのはやいよ〜」とよく言われたものですが、本当に『時間』って掴みどころのないもので、その概念についてすら考えさせられました。
でも、長かったなぁ(もうヤメナサイ)。
驚くべき事に、Mを演じたルーニー・マーラにとってはあのシーンが『人生で初めてパイを食べた経験』だったとか。そして彼女はもうパイを食べることはないだろう、とも付け加えています。そりゃ〜あれが初体験だったら、もう要らないってなりますよね。
と、このシーンに関してはこの位にしておいて。
私が涙ぽろりしてしまったシーンはいくつかあるんですけど、一つ目はズバリ、Mが家を引っ越してしまうシーン。これがまた、案外早い段階で出ていってしまったので予想外。置いてけぼりのCの気持ちを思うと、ずいぶんと胸が締め付けられました。
《彼女をそっと見守る姿が切ない》
それから、時がだいぶ流れCとMが住んでいた想い出の家が取り壊されてしまうシーン。私自身、まるで自分の実家が取り壊されたような哀しみに襲われました。しかもCは、あと少しでMが隠しておいた手紙を手にできたというのに・・・
死んでまでこんな目に遭わせないだげて〜
未だ悲しみや嫉妬は感じてしまうのだから〜
そんなことを思いながら、私の頬を涙(a.k.a. 宝石)がツーっと伝っていくのでありました。
先に出逢ったお向かいの家のゴーストも、家が取り壊されたことで成仏してしまうし、一人取り残されたCが切ないのなんのって。私だったら生きていけない(お前はもう死んでいる)。
《ゴースト同士がテレパシーかなんかで会話する場面は、
シュールで笑える》
なんとなく、Cにもゴースト仲間がいて安心していたというのに。
でも、ラストでCがちゃんとMの手紙を手にできて救われる想いでした。うれし泣きっす!なにより、Cが壁をホリホリする姿が可愛くてツボ(布の中はちゃんとケイシー・アフレックということを忘れた上で)。
個人的には、とっても好きな作品。
多くを語らずとも、独特の間と雰囲気で観客に心情を読みとらせるのが上手い!寂しげな雰囲気をつたえるロングショットや、ユニークなアングル、画面アスペクト比をほぼ正方形にする編集もよかったです。完全にペース持っていかれました。
誰もが一度は「死んだらどうなるのか 」と考えたことはあると思うんですけど、本作を通して『死』、またそれと表裏一体の『生』についても改めて考えてしまいました。いずれ死ぬのが前提条件として、私たちはふて腐れるでもなくどう今世と向き合っていくべきか(ここでは魂は永遠という説なんかは置いておいて)。
人生の意味なんぞ死んでみなきゃ分からない。死んでも分かるかは謎ですけど、『受け入れて前に進む』しかないんでしょうね、人生なにごとも。自分がいなくたって、世界は廻っていくのだということも。
離職を考えているみなさん、自分がいなくても会社は廻るので安心してお辞めください。
とはいえ、地縛霊的なのがあるとしたら、出来れば誰にも死んでからCのように彷徨ってほしくないなとは思ってしまいました。そういう意味では、自分目線よりも『他を想う』という視点が得られる内容なのもよかった。怪奇現象が起こっても、なにかメッセージを伝えたがっているのかも?と、ちょっと他人(ゴースト)軸で考えられるようになるかもしれません。
序盤からカメラの長回しが目立つので、人によっては苛立ちを覚えるかもしれませんが、個人的にはおすすめしたい作品です。
では、次に気になった点をちょこっと考察してみたいと思います。
■ 手紙の内容を考察 ■
Mが家を引っ越す時に、そっと忍ばせた謎の手紙(メモ書き)。一体何が書かれていたのか気になったので、まずは調べてみました。
ら!!内容を知っているのはメモ書きをしたMを演じた、ルーニー・マーラのみだとか。監督やケイシーも含めて誰一人として知らないそうで、マーラも「絶対誰にも教えないわ 」とあえて秘密にしているそうです。
脚本の段階でも内容を決めていなかった。
つまり劇中では、手紙の内容そのものには深い意味はなかったということ。
やや拍子抜けしましたが、これも私たち一人一人の想像に任せるということでしょうね。このストーリーに正解はなさそうなので、自分なりの解釈をつづってみたいと思います。
Mが自分の幼少期について語る場面があります。
When I was little and we used to move all the time, I’d write these notes, and I would fold them up really small and I would hide them in different places, so that if I ever wanted to go back, there’d be a piece of me there waiting. They were just like, old rhymes and poems. Things I wanted to remember about living in that house or what I liked about it
⇒Mは幼い頃につねに引越しを繰り返していて、よく小さく折畳んだメモ書きを色んなところに隠していました。これは、そこに戻りたくなったら自分の一部(ピース)がそこで待っていてくれる、という理由から。書かれている内容は、昔のポエムとか押韻詩(?)といったものだけど、それが彼女にとっては自分がその家に住んでいたことの証明のようなものだったと。
Mは引っ越す前、彼女が好きだったC作成の曲を聴いていました。私が思うに、手紙の内容はこの曲のフレーズだったとしたら、しっくり来ます。
想い入れのあるこの曲は『Cとこの家で過ごした時間の証明』という意味でも、幼い頃からメモ書きを残していた彼女にとっては、自分の一部をその家に置いておきたかったのかなと解釈できるし。
Cがようやく数世紀の時を経て(と解釈)、Mの一部を手にいれた瞬間に無限ループから抜け出せた。これはCにとって、Mの一部は自分が生きていたことの証明でもあるし、彼女にとっても姿形が見えずとも心の中にCがいることの証明でもある。
とはいえ、そのメモ書きも所詮は紙切れだし、CだけでなくMも『死』を迎え入れるわけなので、無意味といえば無意味でもある。でもその意味のないような紙切れこそが、Cにとっては意味あるものだったのでしょうね。
Cがきちんと『生と死』について深く悟ったとき、それまでの縛られた執着から開放された・・・という感じの解釈に至りました。
最後に!
気のせいかも知れませんが、過去に戻ったCが見た少女が口ずさんでいた歌がCの歌と似ている気が。前世・過去世とかにも繋がってくるのでしょうか。深い。
■ おわりに ■
以上、『A Ghost Story』についてお届けしました。
考えれば考えるほど、色々な解釈が楽しめる映画です。
まだ解けない謎が残っているので、また後で観ようと思います。
では、また。
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