日本公開中止も納得!ホラー映画『mother!』ネタバレ感想
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みなさん、こんにちは。
今日は世界中で話題になった米ホラー映画『mother!(邦題:マザー!)』のご紹介をしたいと思います。
ちなみにこちらの映画、アメリカの映画格付けサイト「シネマスコア」にて、最低評価のF をつけられていることでも知られています。
日本では公開中止(ブルーレイ&DVD発売)にまでなったいうことで、逆に気になる〜という方も多いのではないでしょうか。
ということで早速、簡単なあらすじ&感想、それから気になった点の考察をつづっていきたいと思います。感想はネタバレになりますので、あらかじめご了承ください。
■ ざっくり、あらすじ ■
原題:『mother!』
ジャンル:ホラー、サイコスリラー
脚本監督:ダーレン・アロノフスキー
製作国:アメリカ
公開:米=2017年9月、日本未公開(DVD発売:2018年4月25日)
上映時間:115分
ある郊外の大きな一軒家に、年の離れた夫婦が平穏に暮らしていた。
スランプに陥った詩家の夫(ハビエル・バルデム)は、新しい作品のアイディアを練る日々を送っている。そして妻(ジェニファー・ローレンス)は、そんな彼をとても献身的に支えていた。
何気ない毎日を送っていた二人にある日、一人の中年男(エド・ハリス)が家を訪ねてきた。見知らぬ男だというのに、なぜか夫は彼を家に快く迎え入れる。
突然の訪問者を不審に思う妻であったが、ここでは夫に従うことしかできなかった。
しかし翌日、今度はその男の妻(ミシェル・ファイファー)が訪ねてきた。またも快く迎え入れる夫。
そしてその日以来、謎の訪問者が二人をつぎつぎと訪ねてくることに。戸惑い警戒心を抱く妻をよそに、誰でも快く迎えいれてしまう夫。
一体訪問者らは何者で、物語の結末はどこへ向かっていくのか・・・・
■ mother! ネタバレ感想 ■
ちょっと、みなさん。
この映画・・・
超問題作なんですけど。
開始早々から頭の中がカオス!
(何から書き始めるべきか・・・)
まず炎の中で焼かれる女性の姿が映し出されます。
つぎに映るのは、美しいクリスタルを眺めてほほえんでいる主人公の夫の姿。そして、焼けこげた屋敷がどんどん再生していく様子が描かれます。
ものすごく奇妙で不思議な光景です。
もちろんこの時点でまだ手掛かりは無いものの、
この最初のシーンが物語の鍵を握っていることは、容易に想像できます。
よってこちらも、初っぱなから戦闘モード。
「これは何を意味するのか…? 」と、早くも謎解きの態勢で挑みました。
しかーし、ジェニファー・ローレンスが演じる妻の行動がですね、これまた不可解でして。
冒頭のシーンで、真っ白なシースルーのナイトドレスを身にまとった彼女が、ゆっくり玄関のドアを開け、外を眺める姿が映し出されるのですが。その様が、まるで “見慣れない光景” をみているようで、ちょっと違和感を覚える。
上の写真は、ペンキで壁の塗装作業をしている場面。こんな風に暇さえあれば家の修繕作業している彼女なので、並ならぬ家への思い入れ・愛情を感じます。
と同時に違和感を覚えたのが、彼女が壁に手を当てるシーン。「脈打つ心臓」のイメージが浮かび上がってくるんですけど、なぜ家に心臓があるのか?と超困惑。からの、彼女が「特殊能力を持っている女」というこじつけに至り。
てことはこの映画、霊能力が絡んだゴースト系か・・・!? そうなのか !? とあらぬ方向へ。
するとここで、エド・ハリス演じる男が突然訪問してきて、なぜか宿泊するという流れに。
・・・・おい、迎え入れた夫よ。
妻になにか言うことはないのか。
この時点で、もう完全に物語の展開うんぬんより、夫に苛立ちを隠せずそれどころではなくなります。世の奥様方だったら、大抵は彼女に共感できるはず。
勝手に知らない人を家に泊めるとか、あんたどうかしてるよ。
(『 ストレンジャーズ 戦慄の訪問者 』みせたろか)
わたしのようなズボラ主婦にとっては、人様の突然の訪問ほど困るものはないのですよ。特に劇中のようにゆっくり寛いでるときなんて、相当焦ります。ゆえに妻の気持ちが手にとるように分かり、つい自分のことに置き換えて考えてしまう瞬間がありました。
《主人公の顔にぴたっとカメラが張り付くカットが目立つ。
より彼女視点で鑑賞してしまう効果あり》
「おつまみ適当でいいよね?♥ 」なんて言葉が自然にでてくる、気の利いた、誰でもウェルカムな懐の深い女性になりたかったな。←あきらめるな
そんなことを考えながら、観進めていったんですが。
イライラや困惑の種は夫だけに留まらず、上述の夫婦もほんとに酷い。男のほうは、禁煙の家の中でも平気で煙草を吸おうとするし、女のほうなんて「え、二人は子供まだなの〜?」に始まる数々のアウトな発言をくりかえす始末。私が主人公だったらとっくにブチ切れてますわ・・・・
この迷惑夫婦だけでも勘弁なのに、なんとその息子たちも押し掛けてきた!そしてあれよあれよと兄弟喧嘩がはじまり、兄が弟を殺してお家が殺人現場に早変わり。
一体、何が起こってるのだろうかとパニックに陥る妻。
(そして、私。)
あまりにも状況がカオスで、こちらも物語がここからどこへ向かって行くのか全く読めず。すくなくとも超能力とかオバケとか、そういった物語ではなさそうだ・・・
そんな心穏やかでない状況のなか、主人公は何度かなぞの「黄色い粉」を水で溶いたものをがぶ飲みします。そしてこれが、精神安定剤のような働きをしていることが分かります(※黄色い粉については追記あり)。
これを見た私は、実は彼女が「精神疾患」を抱えているという設定なのでは?と変な深読みまでしてしまい、てんでマトマラナイ。
そして増えていく、なぞの訪問者の数。
いや、あんたら何処から来たよ!(え、宇宙人とかいう展開やめてよ)
もう、人の家だというのにやりたい放題です。
しまいにはキッチンにまで踏み入れられ、シンクを壊されそこら中「水浸し」に・・・・ここのシンク破壊シーンは笑えるほど豪快。
主人公の妻からしたら、もうパニック以外の何物でもありませんけどね。シンク壊されるなんて、そうそうないし。
それまで声を荒げてこなかった彼女も、ついに怒りの感情を露にしブチ切れ。
ここら辺で、「あれ?これって全てがメタファーにまみれた映画なのでは…?」と気づきます(ニブめ)。だって、みんな無茶苦茶すぎる。普通の感覚を持ち合わせている人なんていない(夫、あんたもやで)。
極めつけは、彼女が「ここは私の家よ! 」と主張すると、決まってみんな「へ〜あなたの家ね〜 」と馬鹿にした感じで鼻で笑ってみせる。もうここまでくると、まともな現実世界のお話として考えるには無理が出てくると。だってみんな頭オカシイもの。
それで待ち受けているのが、あの衝撃のラストですよ。
人によっては、トラウマを抱えてしまうインパクトがありました。私もさすがに、あの赤ん坊殺害&カニバリズムのシーンは相当な嫌悪感を抱きましたね。
ラストあたりでようやく、本作は宗教色の強い作品だと気づく鈍感ぶりを発揮した私でありますが。特定の宗教がどうのこうのという以前に、私が感じた率直な意見。
超、悪魔的。
(見てはいけないものを見た気分)
描いてる内容もタブーを含んでいるのはもちろん、描き方自体がもうエグい。やんわりとかではない、かなり暴力的。個人的には、負のオーラしか感じられない、やや精神に悪い終幕でした。
ありったけの《愛》を妻から奪って、また一から別の女性と再スタートする夫。それを何度もくりかえす。
とにかく、訪問者&夫の「自己中さ」には腹が立ったし、主人公の妻はただ搾取されるだけで終わってしまい、不甲斐ないのなんのって。自分の主人がまともでよかたー。
後味が非常に悪い映画ですが、個人的には好きな作品(傑作)です。すくなくともこれだけメタファーに富んでいて、賛否両論が激しく、終わった後に誰かと語らずにはいられない映画って少ないと思うので。
色々と気になる点があるので、
次の章ではそれらについて「考察」してみたいと思います。
■ あれこれ、考察 ■
①登場人物の正体
これは考察というか監督がみずから、「主人公の妻は“マザーアース=母なる大地”というメタファーなんですよ」と発言していました。他のインタビューなんかも拾っていくと、どうやら『聖書』の創世記をモチーフにした物語だということが分かります。
聖書に詳しい人はすぐに、点と点がつながる内容だと思います。イマイチという方は、Wikipediaを参照してみて下さいね。
- 主人公/mother:マザーアース
- 夫/Him:神、創造主
- 男/man:アダム
- 女/woman:イブ
- 兄/oldest brother:カイン
- 弟/younger brother:アベル
- 赤ん坊:イエス・キリスト
- その他大衆:信者
世界でベストセラーの書物といえば『聖書』ですので、夫が物書きというのも納得だし、妻が家をとても大切に修復しているのも納得。家=この世だから。
エンドクレジットを見ると、みな特定な名前がないことが分かります。また夫だけHimと大文字から始まる記載がされていますが、主人公はmotherと小文字綴り、それ以外の人物の名もみな小文字です。これはHimが神=創造主であることを示していますよね。
キッチン水浸し=『ノアの方舟』というように、メタファーを使いつつ全て聖書に沿った内容の展開になっていることが分かります。
何度も理想の世界『楽園』を描いてはうまくいかず、どかんと壊してやり直しの連続。創造主がとても利己的に描かれているのは明白なので、もしかしたら悪魔的なオーラ漂うラストだったし、アンチクライスト提唱してるのでは?とさえ感じました。ちょっと深読みしすぎ?
②八角形
家の形から装飾品にいたるまで、八角形のものが目にとまります。上の写真のライトもそうですね。八角形=8という数字は、キリスト教には大きな意味がある数字。
天地創造の七日間にキリストの復活日を足して8日ということで、『復活』という意味が込められているそう。他にはノアの方舟で助かった人も8人ですし、教会建築も八角形がみうけられます。不思議な造りの家だな〜と思っていたのですが、こういった理由から八角形を意識してセットを造ったのかなと考えました。
③黄色い粉の正体
これ、劇中でもずーっと気になっていたんですけど。これを飲むと落ち着きを取り戻す彼女ですが、彼女がマザーアースだとなると、これは何か地球とか異次元に関係するものに違いない・・・でも何だろう?と気になって寝れず(そして悪夢で目を覚ます)。←なにやってんだ
「黄色」という色にも意味がありそう。太陽を表しているのかなとも思ったんですけど、しっくり来なくて色々調べてみました。すると瓶の見た目からも、ORMUS(オームス)という魔法のような物質の存在があやしいと発見。どうやら、“賢者の石”とよばれるに相応しい万能効用のある魔法の物質なんだそうです。
この黄色い粉が何なのかは監督も触れていませんが、魔法の物質ORMUSが怪しいかな〜と。超絶オカルティック!
④ポスターの意味
こちらのポスターにも何か意味深だなーと思ってみていたら、本作のシンボルを5つほど発見しました。まず右上の花びらの中にはクリスタル的なもの、その下にはカエルを発見。劇中でもカエルが登場していましたが、どうやら神からの罰として人間に与えられた疫病の象徴と言われているようですね。
分かりづらいですが、その下には煙草を吸う男(アダム)が持っていたライター発見。アダムが『禁断の実』を食べてしまってエデンの園から追放されたのはあまりにも有名ですが、このライターは後にマザーアースを脅かすことになる、人間たちの善悪の知恵の象徴なのかなと思います。全てはアダムとイブの失楽園からはじまった、と。
おつぎに左上には、夫(Him)のHoly cardを発見、その下にはドアノブ。ドアノブといえば、兄が弟を殺したときの凶器として使われていました。と、こんな感じで色々なメッセージが込められていて面白い!
⑤心臓の意味
壁に手を当てると、浮かび上がってくる「心臓」のイメージ。初めはさっぱり意味が分からなかったんですけど、これはマザーアースの心臓そのものなのでしょうね。何度か心臓の状態が映し出されるんですけど、訪問者らによって家を破壊されるたびに、どんどん心臓は黒く変色してダメージを負っていっているのが分かります。
■ おわりに ■
以上、いろんな意味で話題をかっさらった映画『mother! 』についてお届けしました。
まさに、タイトルの “!” が示すような驚きの連続でどっと疲れますよ。
人それぞれ色々な解釈ができる映画だと思うので、自分なりの視点をもって観ると非常にスリルを味わえる映画だと思います。
傑作or駄作、評価がきっぱり分かれる作品だと思いますし、人によっては受け付けられない変わり種であることは間違いありません。
でも、とにかく演技や映像はすばらしいと思うので、個人的には好きな作品です(※主演ジェニファー・ローレンスはあまりの激しい演技に、過呼吸&あばら損傷したとか)。
まぁ、安易に人様にオススメできませんが・・・
では、また。
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